シャクジの森で〜番外編〜

真剣な面持ちで一歩前に出るレオ。

ますます二人の距離が近づく。

大きな手がぴくりと動き、頬の辺りに向かってのびていく。

パトリックがいち早く察し、止めようと声を上げる。


「―――レオ、いけない!」




―――・・・君は、私の妃ゆえ・・・―――




「・・・レオ、そのくらいに致せ」



伸ばされていく腕を強く掴み、抑えきれない熱情を乗せるグリーンの瞳を冷やすよう、温度のない瞳で見据える。


これ以上は、何も、伝えさせぬ。



「エミリー、こちらへ参れ・・・」



腰を引き寄せてレオから引き離す。

腰に当てた手に自然に力がこもる。

全く油断ならない。




―――・・・本当に、困ったものだ・・・―――




「―――っ・・・アラン、すまん―――つい、な。忘れてくれ」


両手を上げて首を横に振り後退りをする。

私とレオを見比べ、戸惑っている様子が腕の中から伝わってくる。

君は、このまま分からぬほうが良いか。

息を吐き、腕を緩めて呟く。



「全く、君は・・・仕方あるまいな・・・」





無言のままずっと成り行きを見ていたサリーは、腕を下ろして項垂れつつ外に出ていくレオナルドを見て、ため息を一つ吐いた。



―――なるほど、そうかい・・・あの方も切ないねぇ。

・・・それに、パトリック様のあの様子。

ひょっとしたら、そうかもしれないね・・・。

てことは、イイ男が二人も、か。

いくら結婚してるからって、アラン王子は、この先も気が抜けないねぇ。


“ヤキモキするだろ”


あれは半分冗談だったけど、まさかホントだったとは。

悪いこと言っちゃったね・・・私はもうここにいちゃいけないよ。

お邪魔だね―――



「アラン王子、王子妃様。私、もう帰るよ。元気な姿が見られて安心したし。荷物も渡せたし」


「サリーさん、忙しいのに、来てくれてありがとう。とても嬉しかったわ」


「いいんだよ。店はスミフが見てるし。それに私が王子妃様に会いたかったんだから、気にしなくていいよ。―――――じゃね、また会える日を楽しみにしてるね」