シャクジの森で〜番外編〜

「サリーさん、なんだかとても可愛いわ。ね、アラン様?」

「・・・私にはよくわからぬが・・・」

「か・・・いやだよ。王子妃様、勘弁してよ」


頬を赤くしたまま、サリーはてのひらを横に振って後退りをする。


「サリーさん、あのね・・・」






「どうしたんだ?随分賑やかだな?」


コンコンと、ボードを叩くノック音とともに、向こうからレオナルドの声が聞こえてくる。


「アラン、彼女―――っ・・・」



ノックの音に反応し、振り返り見るエミリーの姿を捕らえたグリーンの瞳が見開き、気が付いたのか、と呟いた。

それが少々潤んでいるように見えるのは、燭台の灯りの揺れの影響だろうか・・・。



「・・・エミリー・・・」


名を呼び脇目もふらずにつかつかと傍まで行くと、レオナルドは最上級の甘い笑顔を向けた。


「・・ぇっと、あなたは・・・」


このようなもの、友人である私はもちろん、爺ですら一度もお目にかかったことが無いだろう。



―――・・・全く・・・―――



エミリーは微笑みを返してはいるが、どこか戸惑っているように見える。

首を傾げつつ見上げる様は、頭の中にハテナマークを浮かべ“この方はどなただったかしら”と記憶を辿っているようだ。

レオは婚儀には参列しておらぬ。久しいゆえ仕方あるまい。

その反応に気付かず、レオは微笑んでいる。



「どこにも痛みはないのか?大丈夫なのか?」



真顔になり全身を確認するように隅々まで瞳を配る。

そのグリーンの瞳をじっと見つめていたアメジストの瞳が、大きく輝きを増し唇がゆっくりと弧を描いた。

・・・どうやら、思い出した、か。



「えぇ、大丈夫です。あの、どうしてここにいるのですか??公務ですか?」

「あぁ・・公務じゃないんだ」

「・・・?」


エミリーは微笑みを崩さず、無言のままレオナルドを見上げる。


「それはその―――書状の・・・」


急にしどろもどろになり、瞳を泳がせ頭を掻きながら言葉を探すレオ。

その心の内が私には手に取るように分かる。

男、ゆえ。



―――・・・困ったものだ・・・―――



「書状、の?・・・アラン様に渡しに来たのですか?わざわざご苦労様です。王子様自ら届けるなんて、よほど大切な書状なんですね?」


あぁ、それは―――いや、違う――――っと、あぁ・・・全く・・、腰に手を当てて俯き、ひとしきりぶつぶつ呟くとレオは意を決したように顔をあげ、エミリーに微笑んだ。




―――・・・無防備、とは申さぬが・・・―――



「・・・決まってるだろう。もちろん、あなたに会いに来たんだ」

「わたしに??」