シャクジの森で〜番外編〜

背中にまわってるか細い指が服を強く掴み、胸に顔を埋め全面的に身体を預けてきた。


「もちろん、怖いと感じると思います。でも、知らないでしょう?わたしはどんなアラン様も、好きなんです。傍にいたいと思う気持ちはずっと揺らぎません。だから、アラン様は、もっとわたしを信じてくれなければダメです。分かりましたか?」

「・・・すまぬ」


「分かればいいです」




信じる、か・・・その通りだ・・・。

君には、敵わぬ。

君は私よりも数倍強い・・・。



しかし、まさか君に叱られるとは。

やはり、私は弱い。

君に相応しい男になれるよう、もっと頑張らねばならぬ。

また一つ増えた。

一番、難しい課題が―――



「アラン様、少し・・苦しいわ」


「・・・許せ、つい―――」



知らず知らず力を入れていた事に気付き緩めると、腕の中でフフと笑い声が漏れた。



「何を笑っておる?」


「だって、アラン様ったら謝ってばかりなんですもの。おかしいわ」



―――確かに、本日一日で数え切れぬほど君に謝った・・・。

今までの人生の中で、謝ったことなど片手ほどもないのに。

常日頃から間違った裁定や判断を下さぬよう細心の注意を払う。

一国の王子が簡単に謝罪の言葉を口にするわけにはいかぬゆえ。

だが、君には――――



「仕方あるまい・・・誰よりも、君が大切ゆえ」



ふわふわの髪にそっとキスを落とし、柔らかな耳朶を唇で挟んだ。



「・・ん・・・待って・・・アラン様・・・」





コンコン・・・


「っ・・・すまない――――いいか?客人が来てるんだが」



伝言だけ伝えると、パトリックはボードの向こうに消えた。


客人とは・・・誰であろうか。


「良いか、ここで待っておれ」と言いおき出ると、サリーがパトリックの背後からひょっこりと顔を出した。

遠慮がちに見えるのは気のせいか。



「さぁ、こっちに・・・遠慮しなくていい」



パトリックに背中を押されて歩くサリーの頬が、ピンク色に染まっている。

ぎこちなく歩く様は、いつもより女らしくしとやかに見える。

珍しく、緊張しておるのか。



「サリー、どうした」


「あ、アラン王子。これ・・・忘れもの・・」


サリーは下がっていくパトリックを横目でちらっと見やり、恥ずかしげに呟くと手に持っていた紙袋二つを差し出した。



「あぁ、そうであった・・・サリーに預けていたんだったな」


すっかり忘れておった。花飾りとサリーのケーキ。

二つともエミリーの大切なものだ。



「あの・・王子妃様は、大丈夫なのかい?」



表情を曇らせ私の体を避け奥をそっと覗き見る。



「心配ない。怪我もなく元気だ。―――・・・会うか?」


「いいのかいっ?」