シャクジの森で〜番外編〜

真っ直ぐに向けられる温度の感じられないブルーの瞳。

無表情に唇だけが動き恐ろしいことを語り始める。


「知らぬであろう?君は既に、この私から逃げられぬということを。例え今私と闘い勝ち上手く逃げおおせたとしても、何処までも私は追っていく。どんな手を使ってでも必ず捕まえる。そうしたなら・・・・」


ブルーの瞳が男の瞳からごつごつとした手に移る。

ひんやりとした風が銀の髪をサラサラと揺らす。

それを見た犯人の瞳が何かに思い至ったように見開かれた。



―――そういえばこの銀の髪・・・。

この恐ろしいまでの威厳。

まさか、この方は・・・。

では、この腕の中の女性は・・・。


犯人の青ざめていた顔色がより蒼白なものに変わっていく。


私は、とんでもないものに手を出してしまったということか・・・。

だが、もう遅い。今更、後戻りはできない―――



「だったら・・・何だと言うんだ!」

「・・・聞きたいか。・・・まずは私に許可なく触れているその手。・・・剣を自在に操っていたのであろう自慢の手。私がそのままにしておくと思うか?・・まずは、その親指からだ・・・」


「な・・・っ―――!」



語られる言葉に犯人の顔が歪み、聞きたくないと首を振るが、アランは決してやめない。


「・・安心するが良い、一度にはせぬ・・・毎日、少しずつだ」


犯人のみに聞こえるように語りかける、耳を塞ぎたくなる残酷なそれは、消えない恐怖を植え付けていく。

ここ最近見せることのなかったアランの冷酷非情な部分が、惜し気もなく犯人に披露される。



「今のこの状態でも、それを実行しようと考える私がいる。抑えてはおるがそろそろ限界に近い―――どうだ。私と闘う覚悟はあるか。彼女を傷付ける覚悟はあるか」


「く・・来るな・・」


「これが最後だ。彼女を、放せ」



エミリーに向けていたナイフをアランに向け、元騎士団長の腕を披露するがそれを苦もなく避けられる。

止まない恐ろしい言葉と降る様に襲い来る刃の殺気。

じりじりと道の隅に、店の壁側に追いやられていく。

その様子を、慎重にグリーンの瞳が見つめている。



「覚悟はあるか、と聞いておる!」



我慢の限界、とビシリと放たれた覇気を乗せた言葉に、ビクッと体を震わす犯人。

その背後に・・スタン・・と上空から一人の青年が飛び降り「――動くな」と囁きナイフを持つ手をガシと掴んだ。

グリーンの瞳がギラッと光る。