シャクジの森で〜番外編〜

「サリー、しっかりしろ!一体何があったんだ!?」



入口で震えながら座り込むサリーを囲むように、屈みこむスミフと数人の客たち。

その脇を「すまん!紳士方!!」と言いながら一人の青年が身軽に飛び越え、風のように店の外へ駆け抜けて行った。

その風圧で、触れてないのにカラン・・コロン・・と扉のベルが鳴る。

青年と一緒にいた老紳士は、心配げに窓の外を見やって呟いた。

「どうか、ご無事で・・」





「スッ・・スミフ、ねえっ・・・ねえっ、どうしよう!?私のせいだっ・・・どうしたらいいの!?」


「少し落ち着け、サリー。何があったんだ。言ってくれなきゃ分からん」



喫茶の客がサリーの言葉を待っている。

心配げな表情で耳を傾け、誰も声を発せず店内は静まりかえっている。



「・・今・・外で、王子妃様が・・・王子妃様が・・・変な男にっ・・連れていかれちゃったんだよ!」

「―――っ!?・・・本当か!?」

「うそだろ!?王子妃様が?」



ざわめきが広がり、その場にいた者誰もが固まったように動けなくなってしまった。

窓の傍にいた紳士は、視線をサリーから外へと移し、不安げに溜息をついた。

サリーはスミフの腕にしがみつき、ガタガタと震えながら開け放たれたままの扉の外を見やった。



「―――あの男、ナイフ持ってたんだ・・・ナイフをっ」



さっきまでここにいたのに。

にこにこと優しい笑顔を見せてくれていたのに。

あったかくてほんわかして、あんなにステキな王子妃様を、あの男は―――



「あんな可愛いお方を―――っ!スミフ、私行ってくる!!助けなくちゃ!」



サリーはスミフの手を振りほどき、立ち上がった。

すかさず引き止める腕が何本も伸びて、出ていこうとする身体ががっしりと捕まえられた。



「待て!サリーが行ってもどうにもならんぞ」

「そうだ、ここにいろ!」

「でも―――でもっ・・・」

「大丈夫だ、サリー」

「いやだ。放して。行かなくちゃ。助けなくちゃ。ねえっ、行かせて!!」



サリーは狂ったように叫び続ける。

スミフはそんなサリーをしっかり捕まえ、自分に言い聞かせるように、サリーを落ち着かせるように、語気を強めた。




「聞くんだ!いいか、サリー。誰の奥方様だと思ってる!?あの、王子様だぞ?王子様が、きっと助けて下さる!心配するな。絶対大丈夫だ・・・大丈夫だ―――」