シャクジの森で〜番外編〜

―――さて、どうする。

お忍びゆえ、目立つわけにはゆかぬ。

周りを見渡してみると、体格のいい男が一人、目にとまった。

一見紳士風だが、あの太い腕、手には剣ダコもある。

それに脚も太く、相当な筋力が付いているようだ。

どう見ても一般人ではない。

悪いが、貴殿に手伝ってもらうぞ―――





素早く背後に回り込み、走り込んでくる犯人との距離を計った。

追い掛けられ、後ろを気にしながら犯人は走り来る。


「貴殿、帽子が歪んでおる」

「は?」


犯人が後ろを見ている隙に、男の帽子を指ではじいて、ふわっと飛ばした。

帽子は目論見通り、走り来る犯人の軌道上にくるくると落ちていく。


帽子を拾う男に犯人が迫る。

よそ見をやめ、こちらを見た犯人の顔が驚きに歪む。


男とぶつかる寸前に、方向を変えようともたついた脚を、すれ違い様に、スパン!と払った。

男の背中の向こうに犯人の体が倒れ込んでいく。


犯人が倒れ行く自分の体をなんとか支えようと、咄嗟に屈んでいる男の服を掴んだ。


男は引っ張られてゴロンと倒れ絡み合い、何度か転がったあと男の体が犯人の上に乗って止まった。



「貴殿、よくやったな。その犯人、逃がすでないぞ」


「は?・・・あ・・あぁ、もちろんだ!逃がすものか。おい!大人しくしろ!」


男は、何故か自分の下敷き状態になってる犯人に戸惑いつつも、改めてがっしりと乗っかりなおし、暴れる手を掴んだ。


その体勢と手つきにあらためて確信する。

やはり、この者は兵士であると。



「おい、誰か警備を呼んで来い!」

「あんた、凄いなぁ!」

「よくやった」

「おい、まだ逃げるつもりだぞ、皆で押さえろ!」



周りの者がどやどやと二人の傍に寄って行き、何とか逃げ出そうと暴れる犯人を、数人がかりで取り押さえ始めた。



―――これで良いな。

少々手荒だったが、許せ。




「貴方様、何者ですか。私は見てましたよ」



背後から囁く低い声。何者であろう。

あの男の連れか。



「さぁ、何のことかわからぬ。人を待たせておるゆえ、失礼する」


「まぁ、いいでしょう。そういうことにしておきます。どうやら、貴方様は恐ろしい方のようですから」


「そうしておくが良い。これ以上構うようなら、決して容赦はせぬ」


ぴりりとした威厳を放ち、その場を急ぎ離れた。


何者であろうか―――