シャクジの森で〜番外編〜

翌日。

いつも通りに城に出勤した私は、早速国王へのお目通りを願った。


国王も忙しい身だ、今日は無理かもしれない。

何時まで経っても、連絡がなく、急な申し出ゆえに明日になるだろう。


そう思い始めた昼頃、王の塔から使いが来た。




それは、夕暮れに近い時刻。

謁見室に通され挨拶をすれば、国王は相変わらずの茶目っ気のある笑顔をくれた。

人払いを願い、二人きりになった中、国王の声が静かに発せられた。




「して、パトリック・・・用件は、何じゃ?」

「はい。舞踏会の件で御座います。今日はその返答をしに参りました」

「おぉ。そなたも漸くその気になったか!」



国王の落ち着いた声が、喜色を含んだものに変わった。

それならば早速・・などと、嬉しげに言葉を継ぐのを急いで制し、自分の考えを述べる。

国王は時たま頷きながら、あたたかな瞳で私を見、静かに耳を傾けてくれた。



「そうか。それは大変良いことじゃ。そなたも、漸く前に進めるのじゃな?」

「はい―――恐らく・・歩みは、歩き始めの赤子のごとく遅いと存じますが―――」

「それでも良い。しっかり励むが良い―――・・おぉそうじゃ。励むと言えば・・・パトリック。あの薬はもう試したかの?」

「は?―――薬、ですか。いえ、まだ。・・何故でしょうか。私は具合など悪くなく―――」

「ん?・・あの日、疲れておるようだ、とウォルターから知らせを受けていたゆえ、ジャック殿から戴いた、滋養強壮に良いという秘伝の薬を授けたのじゃが・・・無駄だったか?」



・・・滋養強壮とは。

確かに、効能に書いてあったものだが。



“貴方様も決して若くはないということです”



ウォルター・・・君は、全く、余計なことを―――


国王は、何処まで聞いたのだろうか。

間違いを正さなかった私が一番に悪いのだが。




「はい。全く、その様なことはありませんので・・・。ですが、必ず、そのうちに必要になりましょう。お返しせず、有り難く、頂戴致します」