シャクジの森で〜番外編〜

「あ・・・私のダンスは、ただのおまけみたいなものだよ。スミフの引き立て役というか・・・。父親が音楽家なのは、全然関係ないよ。私はさ、もともとあの家の子じゃないんだ」



丁度月が雲に隠れてしまい、辺りが暗くなる。

傍らにあった灯に照らされたサリーの表情は、何とも言い難いものだった。

強いていえば、寂しさを隠すような、そんな微笑みだ。



「―――私は、よく覚えてないんだけどさ。ちっさい頃、あの店の近くで泣いていたらしいんだ。“かーちゃんがいない。かーちゃん、かーちゃん”って。一生懸命呼びながらフラフラと歩いてたって。で、どういう訳だか、あんまり話してくれないんだけどさ。あの家に引き取られて育ててもらったんだよ。ほらっ、私、スミフと全然似てないだろ?」



そう言ってにこっと笑う君は、哀しみの欠片もなく、寧ろ嬉しそうにも見えた。


確かに。

似ていないと思ってはいたが、それは母親似なのだからと、そう思っていた。



「そう、なのか。だが、血の繋がりはなくとも、君が愛情を注がれて育ってきたことは、よく分かるよ」



小気味いいほどに、自分に正直な性格。

時に、それが頑固にも思え、辟易するが。


ソラ・・か。

良い人だったんだろうな。



「そうだね。私は、二人にすごく感謝してるんだ。一生懸命だったよ。せめてもの恩返しに、少しでも役に立とうと思ってさ。バイオリンは、弾いてみたけどぜんっぜん才能なくてダメだったんだ。でさ・・・何が出来るかって考えて。独学だったけれど、ダンスの練習始めたんだ。ほら、たまに市場通りの広場にダンサーが来たりするだろ?」



見よう見真似でさ。

そう言って立ち上がったサリーは、クルンと回ってピタとポーズを決めて見せた。



これでも王族の者として、いろいろな物を観てきた自負はある。

その中でも、サリーのダンスは、独学とはとても思えない素晴らしさだと思う。

大変な、努力をしたんだろう。



「あ、でも。時たま店に来たダンサーにこっそり教えて貰ったりしたけど・・・。あの時は褒めて貰って頭なでられたりして、結構楽しかったな・・・。ケーキもさ、ソラに叱られながらも作れるよう練習したし。だから、スミフに請われれば、こうして一緒に行動して、ダンスを披露するんだ。最近は、あまりないことだけど」



話しながら、ダンスのステップを踏むサリー。

月明かりの中で浮かぶその姿は、それはまるで妖精が舞うかのように見える。



いつも明るい君に、そんな身の上があったとは。



「あ・・・あー・・ごめん・・・。変な話しちゃったね。何でだろう、そんなつもりなかったのに。あ、ねぇ、しんみりしないでくれよ。誕生日なのにさ、私ったらダメだねぇ・・。あ!そういえば。手は治ったのかい?」