シャクジの森で〜番外編〜

瞳を真っ直ぐに捕えて微笑み作法通り丁寧に誘えば、周りにいた令嬢達の囁き声が喜色を含み少し騒がしくなった。

面前にあるコスタル嬢の不安げで険しかった表情も、瞳が煌めき頬がほんのりと赤く染まりぐんと可愛らしくなる。

こんなとき、女性は本当に不思議で愛らしく良いものだと思う。

愛情を感じるかは、また別の問題だが。


順番に、一曲相手を願ってはまた別の娘を誘う。


ホストとして、令嬢たちには物腰柔らかく平等に接し、当たり障りのない会話を心掛ける。

皆一様に“今、特定のお方はいるのですか?”などと訊ねるので、アルスター嬢にしたのと同じ返答を繰り返した。


ダンスの合間をみて挨拶と祝いの言葉を述べに来る紳士たち相手には、同年代には軽口を交えた会話を、年輩に対しては敬意を払い、ワインを共に楽しむ。


そうしているうちに、休みなく奏でられていた音楽がプツリと途切れたことに気付いた。

今の時刻は丁度パーティも終盤に差し掛かったところで、会話もダンスも盛り上がり気分は皆最高潮を迎えている。

何故、演奏を止めたのだろう、楽士達にトラブルでもあったのだろうか・・・。



様子をみていると、広間の中央に進み出て来たシンディがてのひらをパンパンと叩きあわせた。

皆のざわめきが止み自らに注目が集まると、シンディはにこやかに笑みながら膝を折り、深深と礼をとった。

何を、始める気なのか。




「皆さま!お静まり下さりありがとうございます!私、シンディ・ラムスターは、改めて、敬愛するお兄様にお祝いの言葉を申し上げたいと思います。お兄様!お誕生日おめでとうございます!」




会場の中から拍手が沸き起こったので、微笑みながら手を上げて見回し、皆に無言の挨拶をする。

どうやら、今から例の贈り物が始まるらしい。




「今日はとても趣向を凝らしたものを用意したんです。私からの特別な贈り物、お兄様、どうぞ受け取って下さい!これは、皆さまにも楽しんでもらえると思いますわ。とても素敵なんですから!」




シンディの腕が指し示したのは、広間の入口付近だ。

そこには、執事に誘導され入ってくる者が二人いた。

一人はバイオリンを持った年輩の楽士。

もう一人は鮮やかな色目のドレスを着た赤毛のスタイルの良い女性。




―――っ・・あれは・・あの女性は―――――――