シャクジの森で〜番外編〜

人波が割れ彼女の姿が目に映ると、自らの瞳と表情も柔らかになるのがわかる。

私も、わかりやすい男になったものだな―――



「二人ともよく来てくれたね。君が我が屋敷に来るのは、何年ぶりかな?」

「―――4年ぶり、だな。今回はエミリーがおるゆえ、良いかと思ったが・・やはり、場の空気を堅くしたな?」

「いや、気にしないでくれ。じきに元に戻るよ。・・・エミリー、我が屋敷へようこそ」

「こんばんは、パトリックさん。おたんじょう日おめでとうございます。ここに来る途中、とてもすてきなお庭が見えたわ。灯とお花がげんそう的で美しくて、立ち止まって見とれてしまったの。・・・でもすぐに“行くぞ”ってアラン様に手をひかれてしまったわ」



もう少し見たかったけれど・・・と、唇を尖らせてアランを見上げるエミリーに対し、うむ・・と口ごもるアラン。

彼女の今夜のドレスは、袖がないデザインのものだ。

淡い紫色の柔らかな風合いのドレスは彼女の雰囲気によく合い、艶めく金髪と美しいアメジストの瞳を引き立たせている。

こうして話をしていても、会場にいる男性の視線が彼女に集まってるのがわかる。

今夜初めて、噂の王子妃の姿を見る者も多いのだ、興味津々なのか、彼女に心を奪われているのか。

どちらにしろ、いつも無表情な氷の王子が彼女の言葉に少しばかりうろたえる様を見て、さぞ驚いていることだろう。

氷の王子を困惑させる女性は、エミリーだけだ。




「今夜は風があるからね。君の身体を心配してのことだ。アランを許してやってくれないか?庭なら、あとで屋敷の中から見るといい。また違った風情を楽しめるよ」



アラン、良い場所を知ってるだろう?と言えば、少し考えた後に、あぁあそこだな?と受け合った。

案内などしなくとも、後で彼女を連れて行ってくれる筈だ。




「エミリー。ほら、聞いてごらん。今良い曲がかかっているだろう?1曲、ダンスのお相手を願いたいが、いいかい?」



―――今夜は私のパーティだ。

やはり、一番に誘うのは、君でなければ――――



左手を、す・・と差し出せば、君の右手がそっと重ねられた。

指先が冷たいと感じれば、この腕で身体ごとすっぽりと包み込み温めてやりたいと思ってしまう。

このまま攫ってしまえれば、どんなにいいだろうか――――


君より先だが、いいだろう?の意を込め視線を向ければ、アランは彼女の腰からゆっくりと手を放した。

その心中は、私もつい先程に体験したばかりだ、非常に理解できる。

まぁ、彼の場合は私の比ではないだろうが。



「アラン、暫くエミリーを借りるよ」

「・・・いいだろう」