シャクジの森で〜番外編〜

「いえいえ、シンディはまだ学生ですので―――アルスター様のご息女に比べれば、まだまだ子供です」

「まぁ、そうですの?すっかり大人びて見えますわ、もう20歳を過ぎているかと思いましたわ」



そう言ってコロコロと笑い、アルスター婦人は入口近くを指し示した。

そこには、何やら深刻そうに話すアレイク・アルスター殿の姿がある。



「・・主人は今、ご覧の通り、あちらで掴まっておりますわ。長くなりそうで・・・ご挨拶が遅くなってはと思いまして、失礼ながら、私共が先に参りましたの。ラムスター様、お誕生日おめでとうございます。ほら、貴女も。ご挨拶なさいな」

「パトリック様、おめでとうございます。先約がなければ、ダンスのお相手をお願い致しますわ」



ご婦人に似た、少し釣り気味の瞳に少しばかりふくよかな身体付き。

ニコリと笑うと愛嬌があるが、どちらかというと美しいとの表現は合わない娘だ。

そう。

以前、アランが申し込まれた縁談を丁重にお断り申し上げたお方だ。

外見がどうのというわけではなく、その時のアランの心には既にエミリーがいたのだから。



「―――勿論。貴女をお見かけ次第、こちらからお誘いに伺うところでした。是非、お願い致します」



手を、す・・と差し出し笑顔を向ければ、緊張のためか乗せられた手が震えていたが、ダンスが進むにつれて少し解れてきたようだ。スローな曲でもあるため、あちらから話しかけてきた。



「パトリック様は、大変おモテになるのでしょう?今は、その・・お付き合いしてるお方とか、御心に決めた方はおられるのですか?」

「―――いえ、今のところは誰もおりません。このまま見つからなければ、一生独身でいようとも思っております」



そう答えれば、アルスター嬢の眉がハの字に歪み、戸惑ったような声を出した。

予想外の、意外な言葉だったのだろうか。



「え・・まぁ、そんな・・・何てことなのでしょう」


「あぁそれは。妹を嫁に出すまでは結婚しないと、心に決めてあるせいもあります」



少しばかりの牽制と訂正を加えれば、また少し違う反応が返ってくる。

ホッとしたような表情に見えるのは、自分なりの思う方へと話が行きそうだからか?



「あぁそうなのですか。妹様で御座いますか・・・あの、私は―――」

「あぁ・・曲が終わりましたね。アルスター嬢殿、お相手ありがとうございました」

「あ、いえ。こちらこそ」


強引気味に、中途半端に話を終えてしまったが、アルスター婦人から聞き出すように言われていたのか、自分の意思なのか。

少し、厄介な予感がするな・・・。


アルスター嬢と離れると、待っていたかのように他家の令嬢達が周りに集まってきた。

恐らく、御三家に遠慮していたのだろう。



「パトリック様、次は私と踊って下さいな」

「私もお願い致しますわ」


次々と甘えた声が掛けられ、では順番に・・と言ってると、ざわめきが一息に収まり広間の中がぴりりとした空気に変わっていった。

と、同時に柔らかな気も―――


彼らが、到着したようだ。