シャクジの森で〜番外編〜

勿論、の部分を強調しさりげなく兄としての気持を伝え牽制しておく。

私と同じく、マークも独り身なのだ。

しかも、少しばかりイイ男でもあるのに関わらず未だ独身だとは、まだ遊んでいるのだろうと思われる。

あー、その点に関しては、私も全く人のことなど言えないのだが、それはそれ、今は今、だ。

年の離れたシンディには興味が湧かないと思いたいが、そうでもなさそうなのが何とも困る。

送る視線が、妙に、熱いのだ。



「こんばんは、マークさん。・・初めまして、と言った方がいいのかしら?」

「いえいえ、とんでも御座いません。これは、どうも―――お美しいお方をお連れだと思っておりますれば、シンディ様であられましたか。幼い頃にお会いして以来ですが、すっかりお美しくなられて、見違えまして御座います。あぁ、どうでしょう?丁度今良い曲がかかっております。是非、お相手をお願い致します」



流麗に言葉を並べ、す、と手を差し出す様は極自然で、実に手慣れた雰囲気だ。

今まで堅苦しいからと社交の場を嫌い、招待状を出しても来なかった男と同一人物とは、とても思えない。

シンディも自然に笑みを返している。



「えぇ。私でよろしければ喜んでお受けいたしますわ。ね、お兄様?」



シンディの視線がマークから私に移り、いいでしょ?との確認を迫ってくる。

それを受け、マークも私に許可を求めてきた。



「おお、これは失礼致しました・・・兄上君、失礼ながら、お先によろしいでしょうか?」



そう言ってにんまりと笑うその顔がどうも悪戯っぽくみえる。


―――あぁそういえばそうだった。

この男は、国王タイプだったな―――


勉学や体技だけに限らず女性に関することまで互いに競い合っていたのは、まだ学生の頃だった。

この男、マークとは、いわゆる悪友だったのだ。

今、昔のことを、ありありと思い出したよ。


チクリと沸いた悔しさを隠しつつ、せめてものお返しとばかりに最高の笑みを向ける。



「・・・あぁ、マーク、勿論だ。シンディ、行っておいで」



我が腕元から離れ、他の手に導かれ行く背中を見ながら、自らに言い聞かせる。

・・・女性へのダンスの誘いは、礼儀の一つ、なのだ・・・。





「ラムスター様。本日はお招きありがとうございます」



不意に横から声がかかり、そちらを向けばご婦人がにこやかな顔をこちらに向けていた。

横には娘の姿も、ある。



「っ、これは。アルスター殿の・・ようこそ御出で下さいました」

「・・・シンディ様、すっかりお綺麗になられて、兄君様におかれましては御心配の種が尽きませんわね?」



マークと楽しそうに踊るシンディを見、アルスター婦人はふっくらとした笑顔を向ける。

今の一部始終を見ていたのだろうか。