シャクジの森で〜番外編〜

階下のざわめきが耳に届き始めると、シンディの弾む足取りが楚々としたものに変化していく。

階段を降り大広間に一歩足を踏み入れれば、音楽も声もぴたりと止み、集まっていた来客の視線が一息に此方に集まった。



「皆様、ようこそ御出で下さいました。名目としては私の誕生パーティですが、もうこの年齢です。堅苦しい挨拶は抜きにしましょう。さぁ、今宵はどうぞ、心行くまでお楽しみ下さい!」



言い終えると、合図するように楽士たちが軽やかな音楽を奏で始め、瞬時に場は賑やかになる。

このところは毎年この流れだ。

皆慣れたもので、興が乗ってから入れ替わるように挨拶に来ることが多い。

それほどに、毎回招待客が変わっていないとも言える。

新しい付き合いがない、とでも言おうか。



“だからね、出会いを広げるために、舞踏会をした方がいいと思うの”



これでは、シンディが心を砕くのも仕方がない、という訳だ。


今でこそこうだが、これでも父がご存命の頃は、私が上座に座るところを皆が並び待ち、祝いの言葉を述べてから各々が歓談やダンスを楽しんだものだ。

中には、自分の娘を紹介する者もいたな・・・。

その子は緊張してコチコチに固まった笑顔で「ダンスを」と誘ってきた。

まだ幼かった私は驚いて、隣にいた父君を見上げた記憶がある。

あのとき、父君は何も仰らずににこにこと笑っていただけだったな。



「パトリック様、誕生日おめでとうございます。あの節はお世話になりました。今年は父に代わり、私が参じまして御座います」

「マークか、君が珍しいな。よく来てくれた。会うのは、先の嵐の復旧会議時以来か・・・そちらまで、中々視察に行けなくてすまないと思ってる。今の様子はどうだい?」

「はい。お陰様で大方の工事は済みまして、あとは道整備を残すのみとなりました」

「そうか、良かったな。アラン王子を始めとし、私もそちらの被害には大変心を痛めていたんだ――――・・・」



一通りの会話が済むと、マークの視線がちらちらと私の隣に落ちる。

それに加え「ね、お兄様。こちらの方はどなたなの?」と、我が妹からも催促が来てしまった。

やはり紹介せずには収まらないか。


・・・シンディはともかく、マークは知ってるのだから自分から名乗り話し掛ければ良いものを・・・。



「・・・シンディ。こちらは南西の街長を務めておられるリーヴェル家の御子息マーク殿だ。私の古くからの友人でもある。覚えてないだろうが、小さい頃にお会いしているんだよ。・・マーク、私の妹の、シンディだ。勿論、覚えているだろう?」