シャクジの森で〜番外編〜

「お兄様ったら・・・ありがとう。でもお兄様も、今日はいつもよりも数十倍素敵だわ!ダンスのお誘いも休みなく来るわよ!」


きっと忙しくて、私なんて見張ってられないわよ?と、人差し指を唇にあててウィンクして見せ、頬を染めてウフフと笑う姿は本当に愛らしく、私が他人ならば放ってはおかない可愛さだ。


・・・今日の招待客の中にはシンディ目当てに来る者も多い筈だ。

本当に、気を付けていなければ・・・。


国王夫妻との食事会のあとに、見合い話がちょこちょこ来ているのは、勿論、内緒だ。



「嬉しいことを言ってくれるね。・・・だが、残念ながら、この手だ。暇なら、たっぷりあるんだよ?」

「っ、お兄様。やっぱりまだ治ってなかったのね・・・包帯が無かったから、私ったら・・ごめんなさい」



思いっきり抱きついちゃったわ・・痛くない?と、沈んだ顔で私の右手を見るので、まずは、皆には内緒だよ、と言っておく。

ダンスは、右手に負担のかからない曲ばかりを選んであるから、実は、大丈夫なのだ。



「もう粗方良いんだが、フランクにあまり動かすなと言われてるだけだ。心配ないよ、もう痛みはないから気にしなくていい―――いいかい?ほら、もう気分を変えて・・・」



指の背で青ざめてしまった頬にそっと触れる。

この瞳も、つい先ほどまでキラキラ光っていたのに、潤ませてしまった。

つい、余計なことを言ってしまったな・・・。



「シンディが笑ってくれないと、私の心が沈むだろう?」

「あ・・そう、よね。今日は、お兄様の誕生パーティだもの。妹の私が笑顔でいなくちゃ!」



そう言って一瞬俯いた後にこちらに向けた顔は微笑んでいて、心底からホッとし、私も笑みを向けつつ頭をぽんぽんと撫でた。



「その通りだ。いい子だね―――さぁ、行こうか。シンディお嬢様。私の腕を、取ってくれるかい?」

「えぇ、もちろんよ!ね、お兄様。今年のお誕生日プレゼントは、と~っても特別な物にしてみたの!パーティの最中に出すわ。だから、楽しみにしていてね!」



差し出した腕に飛びつくように手を絡ませたシンディが弾む声を出す。



―――特別な物、か。

あれから音沙汰がないと半ば安堵していたが・・・。

やはり、何か計画をしていたのだな―――



「―――あぁ、楽しみにしてるよ」



言葉とは裏腹に、どうにも、不安が胸を過るのだった。

妙なことでないことを、願う。