シャクジの森で〜番外編〜

包帯をくるくると巻き取れば、縫いとめられた傷が現れたのでじっくりと診てみる。

自分なりの診察ならばかなり状態が良く、もう包帯などなくても十分だと思える。


が。

フランクは、駄目だと言うのだ。

昨日の診察時、明日はパーティだから包帯をせずに済むようにしてくれと頼めば

“どうも貴方様は、御自分の体には無頓着過ぎますね”

と眼鏡をギラリと光らせて渋い顔を作ったのだった。

理由を説明し半ば命令するように強く言ったところ、やっと、パーティの間だけですよ、と念押しの上薬剤を染み込ませて乾燥させたこのガーゼを処方してくれた。


こと体に関することだけは、アランは勿論国王さえも彼には敵わないのだ。

医学を学んでいる私の言葉に少しは耳を傾けてくれるが、私自身のこととなれば叱られる事の方が多い。

言われるほどに無頓着であるつもりはないんだがな・・・。



『傷は塞がりつつありますが、包帯なくてはまだまだ心元ありません。くれぐれもあまり動かさないようご注意下さい』



処方袋にはフランクらしい几帳面な文字でこう書かれてある。

しかも、ギラリと光る眼鏡の絵付きだ。



・・・いつからこんな芸当を・・・

これは、フランクなりのユーモアなのだろうか・・・。



微妙なセンスに苦笑し、少し手間取りつつもガーゼを貼り付けていると、ノック音が響いた。

もう顔を出す時刻になったのだな。



「―――すまない、もう少し待ってくれ。すぐに行く」


『いえ、パトリック様。お待ちかねの、シンディ様がおいでになりましたよ』



侍女の明るい声に入室を許可すれば、華やかな若草色のドレスに身を包み笑顔満開のシンディが飛び込んで来た。



「お兄様!お誕生日おめでとうございます!!」

「―――っと・・・」



いつも通りに元気よく胸に飛び込んでくるのを、右手を庇いつつもやんわりと受け止める。

このドレスは、この日の為とおねだりされ一緒に見立てたものだな。

今日はもう少し早く来ると思っていたが、意外に遅かったな。



「―――ありがとう、シンディ。今日は一段と綺麗だね・・・。私にもっとよく見せてくれないか?」



胸に顔を埋める妹にそう声を掛ければ、嬉しそうにくるんと一回転して見せてくれた。

ドレスのすそがふわりと広がり、花の香りが漂ってきそうに愛らしい。

胸元に光るのは、先日贈ったネックレスだ。

普段使いのつもりだったが、思いもかけず今日のドレスによく合っているとは、我ながらに良いものを選んだものだ。



「シンディ、まるで花の精のようだよ。兄としては、花ごと摘み取られないように、見張ってないといけないな?」