シャクジの森で〜番外編〜

“良いこと、は内緒なの。だって、お兄様にお話すればダメだって言うかもしれないもの”


私の贈ったネックレスと髪飾りを着け、所望した鏡を覗き込み、嬉しそうに微笑みながらシンディはそう言った。

あれから誘導するように何度訊ねてみても、賢くも、我が妹は絶対に教えてはくれなかった。


職務により日頃から尋問し慣れ、百戦錬磨と自負する私の質問をしれっとかわし続け、最後には頬にキスして“おやすみなさい”と逃げるあの技は、一体どこで学んだのだろうか。


話の流れから察するにサリーに関することだろうと思うのだが、シンディと仲の良い侍女に聞いても、にっこりと笑い“存じません”と言うばかりだ。

本当に知らないのかもしれないが。

そうなればシンディ一人で出来ることなど限られてくる。

あちらに帰ってからも何の音沙汰もなく、具体的な動きは何も見えて来ないのだから、それほど大したことではないのだろう。


まず、舞踏会以上の突飛な考えでないことだけは、確かだ。


明日の夜にはもう誕生パーティーだ。

大人になりただの形式的なものとなった催しが、こんなに存在を主張してくるとは思わなかったな。

この、少しの不安と期待の入り混じった感情は、まるで、子供に戻った気分だよ―――


席を立ち長官室の窓から外を眺めれば、今日も落ち葉が風に舞っている。

アランの不在だったあの日以降何も大きな事件は起きず、城内も平和そのものだ。

あのメイドのジェシカも笑顔が戻りつつあるとの報告を受け、この私の手も、フランクに小言を言われつつもペンが握れるようにしてもらっている。


そういえば、国王から戴いた“木の根”の謎は、未だに解けていないな。

もしや、予想通りの妙なモノだったのだろうか。

そうならば、エミリーはさぞ困ってることだろう。


・・・やはり、マズかったな。

国王に伺えば良かったのだ・・・。


腕を組み、うーむ・・・と知らず知らずに唸っていれば、丁度入室してきたウォルターが心配げな声を出してきた。



「失礼致します。パトリック様。あの、また、どうかされましたか?」

「いや。何でもないよ」


また、とは。

心外なことを言うものだ。

数日前のやり取りと既視感を覚えてしまい、しっかりと念を押すことに決める。

また妙なことになっていくのは、ご免だ。



「ウォルター、いいかい?私は、いつも通りに元気だからな?で、用は何だ?」

「それならばよろしいですが。・・あ、これのご確認をお願い致します」

「ふむ。『推理遊び』の取締の決定か―――・・・」



前と違い、アランのいる今はウォルターもすぐに納得してくれる。

やはり、この私にも臣下にも、王子アランの存在は、大きい―――