シャクジの森で〜番外編〜

屋敷に戻れば案の定、シンディがぷっくりと膨れた頬で出迎えをしてくれた。

あからさまな不機嫌な顔も可愛いと思えるのは、今のところはシンディだけだな。



「ただいま。遅くなって悪かったね」

「お兄様、お帰りなさい。お仕事お疲れ様でした。お食事の準備はすっかり出来てるわ」

「ありがとう、シンディ」



待ってる間にシャワーを浴びたようで、髪を撫でれば石鹸の香りがふんわりと漂ってきた。


ね、お腹空いたわ、早く食べましょうよ。

と、腕に巻きつかれ、ぐいぐいと引っ張られるがままに食堂に向かう。

先程買った物は、食後に渡すのがよさそうだ。


上着と鞄を給仕に預け、食卓につく。

国王夫妻との食事のことやチェスのことに話を向ければ、デザートを食べる頃にはシンディのご機嫌はすっかり直っていた。



「ね、お兄様。昨日食べたケーキのお店お休みだったんですって。お帰りを待ってる間に、侍女が教えてくれたわ」

「あぁ、そうらしいな。シンディは、明日早くにここを出るのだろう?店の開店は間に合いそうもないな」

「とても残念だけど、いいわ。また自分で買いに来るわ。お店にも行ってみたいし・・・作ってる人にも会ったみたいもの。どんな人なのかしら」



でも、んー、もしも髭もじゃの怖い人だったら、イメージ崩れちゃう。

やっぱり行かない方がいいかしら。


などと、ケーキをフォークでさしつつ呟いてるのを聞き、思わず笑ってしまう。

今、シンディの中ではどんな人物像が浮かんでいるのだろうか。

この想像力の逞しさには、いつも驚かされ愉快な気分をくれる。



「作ってる人か・・・予想に反し、若くとても綺麗な女性だよ。サリーという名だ」

「サリー・・。え!?もしかして、お兄様は、どんなお方か知ってるの?」

「あぁ。会ったことがあるよ」



ほんの、2度ほど。

しかも、比較的濃い時間を過ごしている気がする。

印象深いのは、彼女の性格ゆえだろうか。



「え~羨ましいわ。だったら・・・。あっ!ね、お兄様。私、良いこと思いついちゃったわ!」



何で今まで思いつかなかったのかしら。

そう呟いて、ぱぁと華やいだ笑顔が大変愛らしいが、今度は何を思いついたのか。



「良いこと、とは何か、教えてくれるかい?」



何故かシンディは首を横に振り、うふふと笑うのみで教えてはくれない。

さて、どうすれば話してもらえるかな―――


自席を立ち、シンディの前に贈り物の包みを置くと、ブルーの瞳が大きく見開かれキラキラと輝きを増していく。



「シンディに選んできたんだよ―――開けて、着けて見せてくれるかい?」