シャクジの森で〜番外編〜

派手すぎず嫌みのない装飾の、昔から変わらない店内。

初めて訪れたのは、父君に手を引かれていた頃だった。

あれは、母君への贈り物を選ぶ時で、店主の髪も今よりもずっとふさふさとしていた。

灯に当たり、ショーケース内の宝石や懐中時計がキラキラと輝き、いつか私もここで想う人に贈り物を選ぶのだと、子供心にも決めていた。


そう。

ここは、老舗の宝飾品の店。

大抵の貴族はここで宝飾品を調達する。

勿論、王家御用達の店だ。


以前は頻繁に訪れていたものだが、もうかれこれ半年ぶりくらいになるか・・・。


こちらへどうぞ、といつも通りに奥の部屋に通そうと導いていくのを遮り、あまりゆっくり出来ないことを告げると、店主は少し残念そうに微笑んだ。



「では、申し訳御座いませんが此方で―――貴方様に御来店いただけるとは、大変嬉しい限りで御座います。本日は・・・贈り物で御座いますか?」



少し遠慮がちに訊ねるところが、何ともおかしく思えて苦笑する。

無理もないか、ぴったりと来店が止まったのだから。



「あぁ、可愛い娘なんだ。18歳くらいの若い子向けのものを頼むよ」

「はい。畏まりました」



店主は顔をほころばせて頷き、では普段身に着けられる物がよろしいですね?と、あちらこちらのショーケースを探り、黒い布の上に品を並べていく。

いずれも可愛らしい色合いとデザインの品だ。

贈り物選びなど久しいこともあり迷っていると、絶妙な頃あいに店主から声がかかった。



「いかがですか?これなど、デザイン的には若いですが気品もあり、20歳以上になられても十分に身に着けられますよ」

「そうだな、一つはこれにしよう・・・私と同じ銀髪碧眼なんだ。髪につける方は、それに映えるものが良いが―――」



ずらりと並んでいる中から、あれこれと悩みつつもシンディに似合うものを選び、包んでもらうことにした。

店主がリボンをかけるうち、ショーケース内にある物が一つだけ目にとまった。



―――あぁこれは・・彼女に、似合いそうだ――――



「店主。すまないね、これも包んでくれないか。包みは、別にしてくれ」



ふと湧きあがった想いに導かれるまま、購入を決める。

きっと気に入ってもらえるだろう。

頬を染めながら身につける様が容易に思い浮かぶ。

こんなにすんなりと決められるとは、我ながらにも珍しいと思う。

慣れているとはいえ、これでも結構迷うのだから。



「閉店間際に世話をかけたね」

「いいえ。有り難う御座います。またの御来店をお待ち申し上げます」


外に出れば、御者が気を利かせたのだろう、馬車がぴったりと横付けされていた。



「―――屋敷へ」