シャクジの森で〜番外編〜

「パトリック、“花嫁探し”私は、賛成だぞ。舞踏会により出会いを広げることも悪くない。何も誕生日に間に合わせることはない、よく考え返答をするが良い」

「・・・あぁ。そうさせてもらうよ」



とはいっても、いくら考えても気が乗らないのは変わらないが。

国王にまで話がいってるならば、覚悟をした方がいいのか。



「っ―――それと、もう一つ伝言があった。『明記し忘れたが、アレは、エミリーの父君、ジャック殿から頂いた大変に貴重なものじゃ。大切に、な』とも―――何のことだ、コレのことか?」



そう言いながら、アランは処方袋に手を伸ばした。

ドキリと心臓が跳ねるが、指先で表面の文字を撫でるだけで手に取ることはしない。


まぁ、アランならば、中を見られても構わないか・・・。



「違うか・・これはフランクの薬だ。何処か具合が悪いのか?」

「その質問、君で何人目だろうな―――戒めと、仕舞っておかない私が悪いのだが」



戒め?と眉を上げる彼に、袋の中身を出して見せる。

と。

一瞬絶句したあとに、ため息を吐いた彼の表情が、臣下を見るものから従兄を見るものに変化した。


彼の掌に乗せてあるのは、濃桃色に染色された小さなカード。

長く使えるよう金属で加工してあり

“いつでも来てねん。サービス増量しちゃうから”

とハート印つきでデカデカと書き込んであるもの。


貴族の男性専門の、いわゆる女性とあと腐れなく遊べる店の、会員カードだ。


エミリーと出会う少し前、当時の私は数々の、ウォルターをはじめとする皆が武勇伝と呼ぶようなことが、ふんだんにあった。

―――アランも知ってることだが・・・まぁ、コレについては知らないだろうから、想像に任せておこう。



「パトリック・・コレは、見覚えがあるぞ。もともと君の物であろう。何故、処方袋に入っている?」



―――あぁ・・何と・・・。

君にも見せたことがあったのか。

もしや、進呈しようとしたのか?

背中に、ヒヤリとしたイヤな汗を感じる。

全く、当時の私は―――



「コレは以前フランクに“使いたまえ”と進呈したんだ。余計なお世話にも、女性っ気のない彼に・・・。若気の至りだよ―――事の詳細はとても話せないので聞かないで欲しいんだが、今日1日君がいない日を過ごすのに、どうしても、コレが見える場所になければならなかったんだ」



苦笑しつつもそう説明すれば、彼は掌の上のカードをもう一度しげしげと見た後、処方袋の中に仕舞い返してくれた。



「そう・・・レオ同様に・・いや、彼ほどに頻繁に思わないが、君の思考も理解に苦しむことがあるな。が、手以外に体が元気ならば、それで良い。君に倒れられては非常に困るゆえ―――」