シャクジの森で〜番外編〜

『舞踏会とは、珍しいことを―――外交については、父君もご存知の通り・・・』

『あーアラン、待て待て。言葉不足であった。違うのじゃ、外交目的ではない。実は本日の食事会にて、シンディに熱心に頼まれての。パトリックの花嫁探しをしたいと申すのじゃ。“たくさん若い娘が集まるように触れを出して欲しい”などと真剣にな』

『シンディが、その様な願いをしたのですか―――父君はどうお考えですか』

『国王としては、大変に愉快な事だと・・・あー、いや・・・。我等もラムスター家の嫁に関しては気に掛けておるゆえに、そう、何も、花嫁探しなどと銘打たずとも良いのじゃ。素晴らしい案と思うのじゃが、どうか?』



「―――と、こう仰るゆえ、君が手を怪我している旨を伝え意向を聞くべきだと申し上げたのだが―――?」

「そのやり取りなら、昨夜シンディとしたのだよ。誕生パーティに舞踏会をセッティングしたらどうかと、そう言うんだ。間にあわないからと説得し、納得して諦めたとばかり―――」



額に手を当て天井を仰ぎ見る。

昨夜に遅くまで起きていたのは、願いの文言を考えていたためか?



「以前より感じていることだが、君は、兄思いのいい妹を持ち幸せだな・・・。兄弟のいない私にとっては、羨ましいことだ」



幼い頃より君のことは兄とも思い慕っておるが、やはり実の兄弟には敵わぬものだ。

そう言いながら、私を見るアランの瞳は細まっており、私ではなくどこか遠くを見ているよう・・・。

そう。

まるで、昔を思い出しているように。



―――あぁ、そうだったな。

アラン、君は―――――・・・。




“・・パーリック・・パーリックにーちゃま、どこ?・・・にーちゃま?”

“あぁここだよ、アラン。もう起きたのかい?”

“―――パーリックにーちゃま!”



あれは、アランがまだ2歳の頃だったか。

昼寝から目覚めて誰もいないのが不安だったのか、舌足らずにも私の名を呼びながら裸足のまま廊下を歩きまわっていたのを思い出す。

今の髭の侍従長が小さな靴を手に、オロオロといった感じで後をついていたな・・・。

今の姿からでは考えられないが、私の姿を見つけて嬉々とした表情を浮かべ、一目散に駆けてきて抱きついてきた。



“アラン?歩くときは、靴をはかないとダメだろう?ほら、侍従が困っている”

“だって・・おにーちゃまに・・・”



私に履かせて欲しいとせがむので、侍従長から靴を受け取って履かせたが、歩くことなくそのまま私にしがみついて離れなかった。


懐かしい思い出の一つだ―――