シャクジの森で〜番外編〜

頭の良い者は既に計画しているかも知れぬ―――

そう言いながら少しばかり顔を顰め、例の鞄を見るアラン。


―――通称、推理遊び―――


今現在、城下の若者の間で流行っている。

主催者はモノを隠し、様々なヒントを散りばめた手紙をあらゆるところに仕込み、限定された範囲の地図を作成する。

参加者は地図とキーワードを頼りに手紙を見つけ、書かれている謎を解きながらモノ探しをするというもの。

市場通りでサリーがぶつかり荷物を散乱させられ、シンディが学内でも流行っていて迷惑を被っているという、頭脳と体を使う遊びだ。


日刊紙には、夢中になりすぎ民家の庭に入り込み住人に叱られた、との記載があった。


面白おかしい遊び。

隠すモノは何でもいい。

見つければ主催者にモノを返して参加者は達成感を得、主催者側は参加者が奔走するさまを楽しむ。

互いに充足感を得るのが最終目的であり、例えば隠されたモノが衣服であっても本であってもそれ自体には魅力なくても、何の支障もない。


ジェシカの証言にもあったように、侵入者たちは自らの服を大きな鞄に詰め込み『推理遊び』のモノとし、使用人達に探させるつもりだったのだろう。

兵が紙を手に歩き回る使用人たちに気を取られれば成功。

兎に角、既存の使用人達に紛れ、自らを目立たなくする事が目的なのだ。



「予めそう作戦を練り仕掛けていれば、落ち葉清掃を始めた・・・か」

「あぁ、彼らには、渡りに船だっただろうな。遊びでうろうろさせるよりも仕事の方が遥かに人が多く、説得力があるからな」



折角仕掛けたということもあったのだろう、一応、遊びは成されていたが―――

レスターの伝書にあった参加者達は兵が張っているのを知り、さぞ驚いたことだろうな。



「しかし、慌てたのではないか?予定外にも先にモノは見つかり回収されてしまったのだ。不覚にも存在を知られ証拠を残したことになる」

「そう、だな・・・」



その辺り、やはり抜けていると言ってもいいか。

いずれにしろ、落ち葉清掃はこちらにとっては幸いなものだった。

やたらと葉を落としてくれた風と木に感謝したいくらいだ。

自然は、素晴らしい。



「―――大方の目的は、城の警備体制の確認と地図の作成だろうな」

「アランの塔の、位置か?」



ギディオン城の最奥に位置し、北に広がるシャクジの森を背負い、私でさえも入れず堅く守られたアランの塔。

その正確な場所を調べに来たというのか。

恐らく侵入方法も探られているだろう。

早急に、警備体制の見直しをしなければ―――



「あぁ。それと・・・これは、私ならば、との見解もあるのだが―――・・。パトリック。侵入者は、恐らく、君を見に来たのだろう」