シャクジの森で〜番外編〜

この様子では、随分話し難いことなのだろう。

廊下では思わぬところに耳があるものだ、やはり部屋の方が良いだろう。

そう判断し長官室まで連れてくれば、ジェシカはますます身体を竦めてしまった。

椅子に座るがなるべく威圧感を与えずに、普段よりも柔らかに対応するよう気遣う。

どうも、今日の私は乱暴なようだ。



「ジェシカ、話してくれるかい?」

「はい・・あの・・お話したいのは、この怪我のことなんです―――」



そう言って包帯を巻いた手を上げて示し、ジェシカの話はぽつりぽつりと始まった。


「私、その・・寮のゴミを捨てる当番だったんです。新人メイドは順番で決まっていて。実は、昨日が私の番だったんです。けれど、それをすっかり忘れてしまっていて、朝ちょっとした騒ぎになってて―――」




『ジェシカ、あなた昨日当番を忘れていたでしょう。見て、ゴミがいっぱいになっちゃってるわよ』

『ほら、先輩達に見つからないように、早く捨てて来ないと』

『そうよ。今のうちよ。私たちが纏めるの手伝うから、早くちゃっちゃと捨てて来なさいな』




「みんなが手伝ってくれて纏まったのは良いんですけど、捨てに行く時間が無くなってしまってて。とりあえず空いた時間に捨てに戻ろうと思って、内緒で木立の隅に置いておいたんです・・・それで・・あの」

「・・・その空いた時間を利用してゴミを捨てに行ったら、その手を怪我をしてしまったわけだね?」

「・・・はい。そうです・・」



余程何かに怯えているのか、それとも後ろめたいことがあるのか、その先をなかなか話そうとしない。

侍女長はすでに話を聞いているのだろう、落ち着いた様子でジェシカを見守っているだけだ。

メイド達のトラブルならば私のところまでは来ない筈。

しかも、場所は木立の中、だ。



「―――それで君は、そのとき“何を見、何を言われた”んだい?」



見当を付けて話しやすくなるようにそう聞けば、俯きがちだったジェシカの顔がぱっと上がった。

その驚きに満ちた表情は、どうやら図星のよう。




「・・あ、あの・・ご存知かと思いますが・・ゴミ捨て場は、城壁のそばなんです。そこまで急いで走っていったら、目の前の場所に、上から人が次々と降ってきて・・・びっくりしてよろめいてしまって転んだ先に岩があって、それでがりがりと擦ってしまって・・・・」