暫くアランとの会話をソツなく交わすのを見守り、途切れたところで腕と口を挟む。
「シンディ、そろそろ暇の時間だよ」
シンディはこのまま馬車に乗せ、先に屋敷に帰すつもりだ。
別れの挨拶をさせ馬車に一人で乗せれば、愛らしくも、お兄様は一緒に帰らないの?と、ぷぅと膨れた。
「残念だがやり残したことがあるんだ。すまないが先に帰っててくれるかい。私もすぐに帰るから夕食は一緒だよ」
「もうっ、馬車の中でたくさんお話したかったのに。すごく楽しみにしたのよ?」
なだめたつもりが、ますます膨れてしまっている。
私相手にはまだまだ子供な我が妹、出来るなら共に帰宅したいのは山々だが仕事を終えるまで待たせておくには、今日はマズイことが多すぎる。
「すまないね。なるべく早く帰るから、すぐに食べられるように夕食の支度を命じておいてくれないか?」
「もうっ、お兄様ったら!わかったわ。待ってるから、きっと早く帰ってきてね?絶対よ!?」
そう言って唇を尖らせたまま、ツンとそっぽを向いてしまったのを、苦笑しながら見送る。
“帰りは、一緒だよ”
そう約束したのは、私だ。
これは、帰宅するまでに、御機嫌を治す方法を考えておかないといけないな。
つくづくと、今日はうまくいかない日だ――――
馬車が城門へ続く道に曲がったのを見届け、急ぎ政務塔へ戻る。
アランはすでに国王の元に帰城の旨を伝えに向かい、じきに執務室に戻ってくるだろう。
この暗さでは、レスターたちの木立の捜索も終了している頃だ。
今までに見つかったとの報告が無いところをみると、侵入者はとうに逃亡している。
足早に玄関を通り抜け階段を上ろうとしたところ、不意に、脇の暗闇から現れた者に呼び止められた。
誰だろうか。
「パトリック様、お待ちしておりました」
業務が終了し、最低限に残して落とされた政務塔の灯り。
階段の下まで進み出、灯に照らされた者は、随分と神妙な面持ちをしていた。
「―――侍女長、どうしたんだい?」
「はい。実は、私の配下の者がパトリック様に申さねばならない事があると申しております。人を介してしまうと誤解を招きかねない事柄で御座いまして・・・よろしいでしょうか」
「あぁ―――では、私の部屋に連れてきてくれないか?」
「いえ、ここに居ります。さ、あなた遠慮せずに出て来なさい。お優しいお方ですから、怖がらなくてもいいのですよ」
「・・・はい、侍女長様」
消え入りそうな声で返事をし、侍女長の背後からオズオズと出てきたのは、今朝に手を怪我していたメイド、ジェシカだった。
薄明かりでも分かるほどに青ざめた頬で深々と頭を下げ、震える声を出した。
「あの・・お話したいことが、ございます・・」
「シンディ、そろそろ暇の時間だよ」
シンディはこのまま馬車に乗せ、先に屋敷に帰すつもりだ。
別れの挨拶をさせ馬車に一人で乗せれば、愛らしくも、お兄様は一緒に帰らないの?と、ぷぅと膨れた。
「残念だがやり残したことがあるんだ。すまないが先に帰っててくれるかい。私もすぐに帰るから夕食は一緒だよ」
「もうっ、馬車の中でたくさんお話したかったのに。すごく楽しみにしたのよ?」
なだめたつもりが、ますます膨れてしまっている。
私相手にはまだまだ子供な我が妹、出来るなら共に帰宅したいのは山々だが仕事を終えるまで待たせておくには、今日はマズイことが多すぎる。
「すまないね。なるべく早く帰るから、すぐに食べられるように夕食の支度を命じておいてくれないか?」
「もうっ、お兄様ったら!わかったわ。待ってるから、きっと早く帰ってきてね?絶対よ!?」
そう言って唇を尖らせたまま、ツンとそっぽを向いてしまったのを、苦笑しながら見送る。
“帰りは、一緒だよ”
そう約束したのは、私だ。
これは、帰宅するまでに、御機嫌を治す方法を考えておかないといけないな。
つくづくと、今日はうまくいかない日だ――――
馬車が城門へ続く道に曲がったのを見届け、急ぎ政務塔へ戻る。
アランはすでに国王の元に帰城の旨を伝えに向かい、じきに執務室に戻ってくるだろう。
この暗さでは、レスターたちの木立の捜索も終了している頃だ。
今までに見つかったとの報告が無いところをみると、侵入者はとうに逃亡している。
足早に玄関を通り抜け階段を上ろうとしたところ、不意に、脇の暗闇から現れた者に呼び止められた。
誰だろうか。
「パトリック様、お待ちしておりました」
業務が終了し、最低限に残して落とされた政務塔の灯り。
階段の下まで進み出、灯に照らされた者は、随分と神妙な面持ちをしていた。
「―――侍女長、どうしたんだい?」
「はい。実は、私の配下の者がパトリック様に申さねばならない事があると申しております。人を介してしまうと誤解を招きかねない事柄で御座いまして・・・よろしいでしょうか」
「あぁ―――では、私の部屋に連れてきてくれないか?」
「いえ、ここに居ります。さ、あなた遠慮せずに出て来なさい。お優しいお方ですから、怖がらなくてもいいのですよ」
「・・・はい、侍女長様」
消え入りそうな声で返事をし、侍女長の背後からオズオズと出てきたのは、今朝に手を怪我していたメイド、ジェシカだった。
薄明かりでも分かるほどに青ざめた頬で深々と頭を下げ、震える声を出した。
「あの・・お話したいことが、ございます・・」


