シャクジの森で〜番外編〜

『そう、それは良かった。でも貴女、気を付けた方がいい。変な男につけられてますよ』

『へ?うそ!』

『嘘じゃありません。ほら・・・あそこに立っている黒髪の男性・・こちらをじっと見ている。おかしいでしょう。貴女は武器になるものを持って、なるべく人がたくさんいるところを歩いた方がいい』




「親切なそのお方は、袋を私に渡しながらそう言うんだ。指差す方を見ると確かに男が立ってたんだけど。私を狙うなんておかしいだろ?ほら、綺麗じゃないし、今日はこんな服着てるけど、お金も持ってないし。いろんな人が来るんだ、市場通りに人が立ってるのはよくあることだし。だけど、その人があんまり真剣に言うもんだから、根負けしてさ。大事なこれを、持つことにしたんだ。きっと、ソラが守ってくれる、そう思って―――」



ふむ・・・やはり、そうか。

大体、思った通りだな・・・

ただ、武器を持つよう促した理由がはっきりしないが――――



「荷物を拾ってくれたのは、その男性一人だけかい?」

「えーっと、もう一人いたけど話したのはそのお方だけで・・結構身なりのいい感じの・・あ、そうそう。そういえば瞳の色が緑色だった。あのルーベンの王子様みたいな色だったよ。ちょっと薄いけど」

「・・・・ルーベン・・・?」



無意識にも呆けたように呟き、右手を握り締めていた。

チクリとした痛みがショックを受けた頭を叱咤してくれる。


まさか、またレオ王子なのか?いやいや、違うだろう。

レオ王子ならば、こんな風に、エミリーに危険が及ぶような命は下さない。


しかも、サリーならばレオ王子の姿形の判別は可能だろう。

・・・それに何より、彼は、そんなに暇ではない・・・と、思うが・・・。


そうだ。

緑色の瞳は、何もルーベンだけのものではない。

可能性が完全に否定出来ないところが、何とも困るが、違うだろう。



半ば動揺しつつもある程度の考えを纏めた。

サリーに戻るよう促してエミリーの元へ急げば、既に元の場所に戻って来ていた。

私たちに気付き、華やいだ微笑みを投げながら手を振ってくれる。

無意識に右手をポケットに入れて隠し、微笑みを投げ返した。


西の空の方に、日が傾き始める。

もうそろそろ、部屋に戻る時だな・・・

サリーも無事に帰さなければ・・・。


サリーと話すエミリーの微笑みが寂しげに見えるのは、気のせいではない。

愉しい時間はすぐに過ぎていくものだ。




「エミリー、いいかい?そろそろ、部屋に帰った方がいい」