シャクジの森で〜番外編〜

じつはさ、城に来るまでに変なことがあったんだけどさ―――

サリーの長い話は、そう言って始まった。



「午前中に王子妃様にプレゼントするケーキを焼いて、じゃぁ、行ってくるね!って声をかけて店を出たんだ。いい天気だし、王子妃様に会えるし、気分も良く鼻歌交じりに歩いてたのさ。そしたら―――」



『サリー、出掛けるのかい?あらあらまあまあ!何だよぉ、良い服着ちゃって!デートかい!?サリーとーっても綺麗だよ!』

『なに言ってんの、サリーは今から城に行くんじゃないか。良い服着てるのはそのせいだよ』

『あぁそうか。そういえば、王子妃様に招かれたって、嬉しそうに言ってたねぇ。いってらっしゃい!気を付けてね!』



「道を歩き始めたらいろんなとこからこんな感じで声がかかってさ。いちいち返事してると遅くなっちゃうから、笑って手を振るだけにして乗り合い馬車まで急いでたんだ。そうしたら二人組の男とぶつかっちゃって―――」



『っと・・・イッテーな!』

『いたたた・・・』

『チッ、お前、よそ見してんなよ!』

『はぁ?何言ってんのさ!』



「あっちからぶつかった癖に悪びれもしないで怒鳴るんだ。おまけに何だか紙を持ってて、それ見ながらブツブツ二人で話してて私の言うことなんか何も聞いてない。こっちは転んで荷物を落としてるのに、まったく拾いもしないんで無視するんだ、失礼だろ?」


「あぁ、そうだな。それは、すまない」



先程叱られた流れもあるせいか、何とも私が叱られているような気になり、つい、謝ってしまった。

そのときのことをありありと思い出し憤慨して拳を作るサリーの肩をポンポンと叩き、何とかなだめる事を試みる。

その男性たちには私も憤るが、早く話を進めて欲しいと思う。

いつだって女性の話は纏まらずに長いものだ。

普段ならば私もよく聞くんだが、今は、時間がない。なるべくならば時を掛けるのは勘弁願いたいのだ。



「それで、どうしたんだい?」



とにかく先を促してみる。

“ヘラ”の話は何処にある?



「あ、えーっと・・だから、仕方ないから散らばったものを自分で拾ってたんだ。そしたら―――」



『あーあ、あちこち散らばっちゃった・・・まったく、何だい、最近の男はしつけがなってないねぇ』


『娘さん、大丈夫ですか?はい、これも貴女のでしょう。落ちてましたよ』


『あ―――ありがとう。よかったー、これ大事なものなんだ。紫色のカード、これがないとダメって言われてて・・・』