シャクジの森で〜番外編〜

「え・・え?サリーさん?待って」


それなら一緒に行きましょうと言って戸惑う小さな背中をぐいぐいと押し「ほらほら、いいから!」と強めに言うサリーに折れ、エミリーはモルトの後に付いていった。

ふぅ・・王子妃様ったら、やれやれだねぇ・・と呟く背中の後ろでそっと耳打ちをする。

――ウォルター、君はエミリーに付いていてくれ。サリーには私が付く――



「へ?ちょっと、アンタ・・えーとウォルターさん、どこに行くのさ?待ってよ!」



命じられるままに足早に歩いていくウォルター、その後を追いかけようとするサリーの前に、す・・と腕を差し出し止めた。

驚いてこちらを見上げる頬が、どんどん染まっていく。



「あ。私は・・・あの警備責任者と・・・」



オロオロと声を出し、なおもウォルターを追いかけようとする身体をやんわりと止める。

全く、どうしてそう私から逃げたがるのか。

・・・もしや、嫌われているのか・・・?

いやいや、そうだとしても、だ。

逃がさないよ、君には聞きたいことがあるんだ。



「お嬢さん。君は、私と、一緒だ」

「一緒って・・何言ってんのさ・・・アンタは王子妃様に付いた方がいいよ。あの中じゃアンタしか守れないんだろ?ほら、アラン王子の留守に羽虫にやられたらどうするんだい」

「あー・・今は大丈夫だ、羽虫はこの近辺にはいない」



鈍いと思っていたが、割と察しのいいことを言う。

確かに、私しか腕の中に入れることは出来ない。

もしや、今の状況、どこまでを分かっている?



「君は―――」

「ん?あれ?ちょっと待って。その手はどうしたのさ―――ちょっと見せてみなよ」

「ん―――あぁこれかい?大したことはないんだ」



エミリーにして見せたように握ったままの右手をふらふらと振って見せるが、細い眉はますます歪められていく。



「そのハンカチを握ったまんまがおかしいって言ってるんだよ。開いてそれ取って見せてみなよ。でないと、いますぐ叫び声をあげるよ!」



そう言い終わるや否や、大きく息を吸い込み始めるサリー。


―――マズイ。これは本気だ―――


動き始める唇を寸でに指先で阻止し、堪らずに安堵の深い息を吐く。

分かったから、止めてくれないか・・ため息交じりにそう言えば、最初からそうすればいいんだよ、ほら見せてよ、とにんまりと笑った。


さっきまでオロオロとしていたというのに、別人のようだ。

その心中がまったく掴めなく、こちらがオロオロしそうになる。


・・・本当に、扱い辛いお嬢さんだ・・・。