飛び来る勢いから刃物ではないと思ってはいたが、この物は硬く、当たれば確実に怪我を負っていただろう。
私に対する宣戦布告だろうが随分と乱暴なものだ、女性が二人もいるというのに。
沸き上がってくる憤りを、拳を握り締め唇を噛むことで何とかやり過ごす。
全く、何て事なんだ。
「え?え・・え・・何なのさ、羽虫かい?どこなのさ」
何が起こったのか訳が分からないまま体勢を立て直し、今現在は武器である“ヘラ”を取り出しキョロキョロするサリー。
良かった、少し動揺しているようだが怪我は無い。
リードはといえば・・・ウォルターに包みを戻され厳重な注意を受けている。
「リード殿、エミリー様への贈り物はきちんと正式な手順を踏んでもらわなければ困ります。それに貴方は急ぎ仕事に戻った方がいいでしょう。フランク殿がお待ちの筈です」
周囲の動向に気を配りながらもきびきびと言い渡すウォルター。
言われたリードが納得のいかない様子で反論を口にしているのを聞き流し、左腕の中を確かめるべく拘束を緩めた。
今この場にいる誰よりも大切な身体がここにある。
事が事だけに、つい強く抱いてしまったが、平気だろうか。
「エミリー、どこか痛むところはあるかい?」
「・・ありません。あの、パトリックさんこそ、だいじょうぶなのですか?」
とても大きな音がしたわ、いつもみたいに手で追い払ったのでしょう?と、見上げていた瞳が私の右腕に移動したので、拳を握り締めたままフラフラと振って見せた。
「あぁ。このくらい平気だ。君は、私が強いことを知ってるだろう?」
「えぇ、もちろん。でも・・・やっぱり、薔薇園には行かない方がいいのかしら・・」
「いや、大丈夫だ。凶暴な類だったが、ラウルに始末を頼んでいる。もう暫くは近付いて来ないだろうから安心するといい」
「そうなのですか。よかった・・・ありがとうございます」
ホッとした表情を浮かべて私の腕の中から離れ、ヘラを構えて辺りを見回すサリーを見つけて笑んだ。
「あ・・サリーさん。羽虫はもういないみたい。だから安心していいわ」
「へ?なんだぁ・・・もういないのかい。もしかして1匹だけ?アンタがいきなり引っ張るもんだから、沢山いるんだとばかり・・・もうっびっくりしたよ!」
エミリーに声をかけられ一瞬呆けた様子だったがすぐにヘラを仕舞い、サリーはカラカラと笑いながらこちらに近付いてきた。
リードは仕事に戻り、今は取り敢えずの危険は去ったと告げると、二人は“良かった”と微笑みを交わし合い、再び薔薇園へと脚を向けた。
アーチ形の門を潜り抜け、サリーの感嘆する声とエミリーの甘やかな声が混じり合い二人の話に花が咲き始めた頃、隙を見て握り締めていた拳を開きみた。
掌からは血が滲み出ており、白い物体を少し汚してしまっている。
掌の状態も物も、思っていた通りだったことを心底から苦々しく思う。
白いそれを慎重に調べると、小さな衝撃が体の中を走るのを感じた。
・・・これはどういうことなんだ・・・やはり、確かめる必要がある、か・・・。
私に対する宣戦布告だろうが随分と乱暴なものだ、女性が二人もいるというのに。
沸き上がってくる憤りを、拳を握り締め唇を噛むことで何とかやり過ごす。
全く、何て事なんだ。
「え?え・・え・・何なのさ、羽虫かい?どこなのさ」
何が起こったのか訳が分からないまま体勢を立て直し、今現在は武器である“ヘラ”を取り出しキョロキョロするサリー。
良かった、少し動揺しているようだが怪我は無い。
リードはといえば・・・ウォルターに包みを戻され厳重な注意を受けている。
「リード殿、エミリー様への贈り物はきちんと正式な手順を踏んでもらわなければ困ります。それに貴方は急ぎ仕事に戻った方がいいでしょう。フランク殿がお待ちの筈です」
周囲の動向に気を配りながらもきびきびと言い渡すウォルター。
言われたリードが納得のいかない様子で反論を口にしているのを聞き流し、左腕の中を確かめるべく拘束を緩めた。
今この場にいる誰よりも大切な身体がここにある。
事が事だけに、つい強く抱いてしまったが、平気だろうか。
「エミリー、どこか痛むところはあるかい?」
「・・ありません。あの、パトリックさんこそ、だいじょうぶなのですか?」
とても大きな音がしたわ、いつもみたいに手で追い払ったのでしょう?と、見上げていた瞳が私の右腕に移動したので、拳を握り締めたままフラフラと振って見せた。
「あぁ。このくらい平気だ。君は、私が強いことを知ってるだろう?」
「えぇ、もちろん。でも・・・やっぱり、薔薇園には行かない方がいいのかしら・・」
「いや、大丈夫だ。凶暴な類だったが、ラウルに始末を頼んでいる。もう暫くは近付いて来ないだろうから安心するといい」
「そうなのですか。よかった・・・ありがとうございます」
ホッとした表情を浮かべて私の腕の中から離れ、ヘラを構えて辺りを見回すサリーを見つけて笑んだ。
「あ・・サリーさん。羽虫はもういないみたい。だから安心していいわ」
「へ?なんだぁ・・・もういないのかい。もしかして1匹だけ?アンタがいきなり引っ張るもんだから、沢山いるんだとばかり・・・もうっびっくりしたよ!」
エミリーに声をかけられ一瞬呆けた様子だったがすぐにヘラを仕舞い、サリーはカラカラと笑いながらこちらに近付いてきた。
リードは仕事に戻り、今は取り敢えずの危険は去ったと告げると、二人は“良かった”と微笑みを交わし合い、再び薔薇園へと脚を向けた。
アーチ形の門を潜り抜け、サリーの感嘆する声とエミリーの甘やかな声が混じり合い二人の話に花が咲き始めた頃、隙を見て握り締めていた拳を開きみた。
掌からは血が滲み出ており、白い物体を少し汚してしまっている。
掌の状態も物も、思っていた通りだったことを心底から苦々しく思う。
白いそれを慎重に調べると、小さな衝撃が体の中を走るのを感じた。
・・・これはどういうことなんだ・・・やはり、確かめる必要がある、か・・・。


