シャクジの森で〜番外編〜

私が言い淀んでいると、うん?それって、私と違うところがあるってことかい・・?、とサリーが難しい顔付きで首を捻りはじめた。

これはまた妙なことを言い出す前に、片を付けないといけないな。



「エミリー、いいかい?何故なら彼は―――っ・・・」



説明しかけたところで、微弱ながらもビリッとした妙な感覚に気付いて押し黙る。


―――これは、何だ―――?


そっと、か細い身体を引き寄せて腕の中に収め、辺りに気を向ける。

と。

今までにない鋭気を帯びた視線が感じ取られた。


例の侵入者か。

ひっそりと、まるで期をうかがうような、この、気配―――

感覚から導き出せば、それは、一人、二人・・多くとも小班程度といったところか。

ウォルター達も同様な感覚を得たのだろう、彼らの気も騒ぎ出している。



「あの・・パトリックさん・・どうか、したのですか・・?」

「しー、静かに。すまないね、大人しくこのままでいてくれないか」



腕の中で不安そうな声を出す彼女の背中をポンポンと叩いて宥める。


安心してくれ。

君は、必ず守る。


次第に濃くなっていく肌を刺すようなこの空気。

相手もこちらの動向に気付いたのだろう。

じりじりと迫りくる気配がする。


何処から、来る――――?



―――パン!


手を叩く音が静寂を破った。

音の方へ目を向ければサリーが表情も晴れやかに笑っている。


―――まずい、私ならば今のを期に動く。



「来るぞ!」



「あーあー!そっか、そういうことかい!男からってのがダメなんだねぇ?だったらさ、私が受け取って王子妃様に渡すよ。それなら、いいんだろ?」



そう言ったサリーの赤毛がふわりと揺れたその一瞬―――向こうにある木の陰に黒い影が動くのを目の端に捉えた。

背中がざわりと騒ぎ耳は微かな風切り音を捉える。


声にならない息を吐き、どうだい良い考えだろ?と、自慢気に瞳を輝かせて笑うサリーを無言のまま腕を掴み引き寄せて屈ませ、間一髪に赤毛を掠めて飛んできたそれを掌の中に収めた。

少しだけ切れた赤毛がパラパラと地に落ちていく。



「つ・・うっ―――」

「パトリック様!」

「いい、構うな。ラウル、向こうだ!」



こちらに駆け寄ろうとするのを制し、逃げる影の追跡を命じウォルターとシリウスには陣形の変更を求める。

3人の中ではラウルが一番に俊足だ、追いつければいいが。


掌の痛みと痺れは無視し、物を確かめるべく握り締めると微かに乾いた音がした。

感覚の鈍った肌からでも伝わり来る感触は、慣れ親しんだものに似ている。