シャクジの森で〜番外編〜

そう言うとラウルは、成程あれが噂の人物ですか・・と呟き、納得した様子で持ち場に戻っていった。


そう。

兵士たちの間、特にエミリー付きの兵たちの間でよく話題に上る男、リード。

大して鍛えておらず、どちらかと言えば男性にしてはひ弱に見える彼を、シリウスは一番に警戒をする。

何故ならば―――――



「あ、リードさん。紹介します。こちらの方は、わたしの友達のサリーさん。市場通りで喫茶店をなさってるの。サリーさん、こちらの方はリードさんよ」

「・・・貴女の、ご友人ですか」



城に招くなどよく許されましたね、と言いながら観察するようにサリーを見るリード。

訝しく思うのは無理もない、か。

身分のない一般人を城に招き入れるなどは、特別な事情がない限り有り得ない事だ。

しかも、政務塔ではなく、どこよりも規律の厳しいアランの塔。

更に、大切な王子妃の元だ。

アランは、余程、このお嬢さんを信用しているのだろうな・・・。



「よろしく。私の店は、西通りにある『空のアトリエ』ていうとこなんだ。イチオシは私特製のマーブルケーキ。市場通りに来たときは、是非立ち寄ってよ。アンタは王子妃様の友人なんだ、サービスするよ!」

「・・私は、医官の助手をしてます。貴女の店ですか・・時間があれば是非・・・。あ、今の言葉は、必ず覚えてて下さい。私のことも」

「やだねぇ、もちろんだよ!アンタみたいな印象深い男、絶対忘れないよ」



カラカラと明るく陽気なサリーに対し、タジタジとしつつぶっきらぼうに自己紹介をするリード。

その二人をエミリーは嬉しそうににこにこと笑って眺めている。



・・・そういえば。

さっきエミリーはこの男のことを“素敵な人”と言ってたな・・・。


何故だろう。

何故、エミリーはリードを友人として位置づけているんだ?

どちらかと言えば、無礼な部類に入る無愛想な、この男を―――



「リードさん。お買いものって、もしかして市場通りですか?紙袋がいっぱいだわ。ずいぶんたくさん買ってきたのね。これ、ひとりで大変だったでしょう?」

「あぁ・・使いで少し買ってきただけです・・・それに、こんなの全く全然大した量じゃありませんよ」



“リードさん、すごいわ”と感心するような様子のエミリーに対し

「平気です。ひ弱な貴女とは違いますから。これくらい、まだまだいけますから」

とフンッといった感じでサラサラの前髪を掻き上げた。

言葉とは裏腹に、その額にはうっすらと汗が滲んでおり、彼にしてはかなりの体力を使っただろう事がうかがい知れる。