シャクジの森で〜番外編〜

「サリーさん・・・でも、それはとても怖ろしいのよ。それに、そんなことを言ってはいけないわ。この方たちはアラン様が選んだ方たちですもの、とても頼りになる立派な兵士さんたちなの。それにわたしは、シリウスさんがいないと、外には出られないわ・・・」


「へ?・・・そうなのかい?あぁすまないねぇ、ちょっと言い過ぎちゃったねぇ・・・。あぁ王子妃様、怒らないでくれるかい?だってあまりにも腹が立ったもんだから黙っていられなかったんだよ・・・」



エミリーに窘められ、急にトーンダウンしオロオロとしたサリーだが、すぐに立ち直ったのか、パッと顔を上げて両手をパシンと合わせ打った。


もしや、何か、閃いたのか?

嫌な予感しかしないのだが。



「あ!ねぇ、だけどさ、王子妃様。きっと大丈夫だよ。出ちまえばその――」

「――っ、待つんだ。サリー、君は何を言うんだい?」



細い腕を掴みぐいっと引き寄せ、よく動く口をなんとか止めさせた。


君はなんてことを言うつもりだ。

そんなことは、とんでもないことだぞ。



「イタタ・・・離して・・」


「あぁすまない。そんなに強くしたつもりはなかったんだが―――平気かい?」



つい、力を入れていた手を離すと、彼女はすぐに腕を摩った。

女性相手だというのに、この私が力加減を誤るとは・・・。

かなり動揺している自覚はある。

もっと落ち着かねば・・・。



「いいよ。でもアンタ、これは、私のような一般人は黙ってろってことかい?」

「いや、そう言うわけじゃない―――・・ただ、君には守るのは無理だ、と言いたいんだ」



―――そうだ。侵入者は一人とは限らない。

それに兵の報告からすれば侵入者の運動能力は高く、かなりの手練れとも考えられる。

最大限の警戒を必要とするんだ。

サリー、君も、危険なんだよ―――



そう言えないところが、何とも歯がゆく思える。

いっそのこと、彼女を遠ざけ本来の理由をサリーに告げてしまおうか。




「アンタ、何言ってんだい。王子妃様の一番近くにいるのは、この、私なんだよ。そんな羽虫なんて近付いてきたらすぐに叩き落してやるよ。いいから、この私に、ドンと任しておいてよ!!」



これでも、商売柄で虫との格闘経験は豊富なんだよ!

サリーは自らの胸をてのひらでぽんぽんと叩いて言いきると、ふんっ、と鼻を鳴らしてくるりと背中を向けた。




「ね?ほら、王子妃様。心配ないよ。私には、この武器があるんだ」



と。

自信たっぷりな様子で取り出し掲げ上げて見せたのは、金属製の平たい棒だ。