シャクジの森で〜番外編〜

「・・それがそうもいかないんだ、エミリー。さっき私は“何かあると・・”と言っただろう?外は今、少しばかり危険な状況なんだ」



私の言葉にウォルター達が反応しているのを目の端にとらえる。

大丈夫だ、あの件ではない、と目と仕草で合図を送れば彼等がホッとしたように肩を落として頷いた。



「え・・・危険、なのですか?でも、ウォルターさんは何も言ってなかったわ・・・パトリックさん、何か、あったのですか・・・?」



さっきまで煌めいていたアメジストの瞳は不安げに揺れ、表情が一息に曇っていく。

全く、本当はこんな顔をさせたくないのだが。

悪いことをしてる気持ちになるよ―――



「あぁ、そうだ。君に、その説明をしないといけないね。いいかい?――――薔薇園に、あの“羽虫”が出たんだ」

「・・・羽虫が・・・薔薇園に・・・?パトリックさん、行っては、いけないのですか?」



・・・ダメなの?と訴えかけてくる瞳が、次第に潤んでいく。


無言のまま頷いて見せればその瞳を伏せ、そうですか・・・と呟く君は、なんて哀しそうな声を出すのだろう。

負けそうになる気を、無理矢理にぐいっと引き戻して堪える。

・・・もしや、私の判断は間違っているのだろうか。



「あ、あの、それなら・・・他の場所ならいいでしょう?サリーさんに、城のお庭をご案内したいの」



胸の前で両手をぎゅぅと組み合わせ見上げてくる。

潤んだ瞳は哀しげながらも力強く、お願い、の気がヒシヒシと伝わってくる。



―――これは、参ったな・・・。

昨夜から楽しみにしていたのだろうな・・・しかし―――



「・・・大した数はいないが、アレは飛びまわり、どこに行くとも知れない。危険なんだ。それは、君の友人のサリーも―――分かってくれるかい?」

「サリーさんも・・・そうよね・・・大事な手に怪我をさせてしまったら、いけないものね・・・あれは、とても怖ろしいのだもの・・・」

「あぁ。大事にならないよう、部屋に戻ってくれるかい?」



「―――はい・・」と力なく頷くエミリー。


良かった、成功したな、とホッとするも言いようのない罪悪感が心中を支配する。

それに、気落ちした君は、何て庇護欲を掻き立てるのだろうか。


皆の前であるにも関わらずその身体を強く抱擁し、私が守ってみせるからと囁きそのまま連れ出したくなる。



「・・・エミリー」