「はい。申し上げます。挙動不審な人物が塔の付近をうろうろと歩きまわっておりましたので、例の侵入者だと判断し、取りあえず尋問をしようと近付きましたところ―――・・・」
『おい、そこの者!!』
『―――っ・・何で、御座いましょう・・』
『何をしている?ここは、アラン様の塔だぞ』
『・・・存じております』
『ならば分かるだろう。今の時刻はだな、皆――――・・おい!待て!!』
「―――声をかけるとびくりと体を震わせ止まり、俯きながらもオズオズと返事をして来ましたのでこちらも一瞬気を緩めたところ、急に身を翻し、とてつもない速さで逃走致しましたので追いかけておりました」
ふむ。
抜いた小剣は脅しのために投げようとしたのだろうが、それも出来ず仕舞いに終わったとみえる。
相手はそれ程に早いということか。
「―――で、捕まえることは出来たのかい?その様子では、取り逃がしたように見えるが」
「はい。真に、申し訳御座いません!!何分、私よりも数倍に速く・・・」
跪いたまま話す彼の大きな体が一層に縮み込み、震えた声を出す。
恐らく私の殺気が伝わっているのだろう。これでも抑えているつもりなのだが。
「あぁ、分かっている。で、その者の特徴は?」
「はい―――姿はこの城の使用人のものと全く同じで御座いました。髪は黒色。瞳は、伏せておりましたので分かりません」
・・・話を聞く限り“不審物の落とし主”とみて、まず間違いないだろう。
やはり、用事があるのは、彼女なのか。
悪いが、アランがいなくとも、この私がいる。
私の視界の範囲内、指一本分たりとも彼女には近付けたりはしない。
決して。
“――私は、エミリーに関することだけには、冷静さを欠くのだ――”
アラン・・どうやら私も、君と似たようなものらしい。
だが、安心してくれ。必ず、守ってみせるよ―――
跪き続ける兵を立たせ持ち場の死守を命じ、再び塔の中へ目を向ける。
そろそろ彼女が現れるはずだ。
それにしても、幼い頃からずっと変わらないな・・・。
煌びやかな王の塔に比べ、シンプルな作りのアランの塔。
政務塔との変化が、全くない。
玄関から覗ける限りの空間にある壁は、相変わらずに石造りなままで装飾も施されていない。
以前と変わったところと言えば、この玄関内の壁だ。
ここに、大きな花の風景画が一つ掛けられ、向かい側に生け花が飾られるようになった、たったそれだけだ。
アランらしいと言えばそうだが、婚姻したのだからもっと手を入れたらどうだろう、と思う。
もっと王子妃色に染めてもいいと思うのだが。
その方が、きっと、エミリーが喜ぶ―――
『おい、そこの者!!』
『―――っ・・何で、御座いましょう・・』
『何をしている?ここは、アラン様の塔だぞ』
『・・・存じております』
『ならば分かるだろう。今の時刻はだな、皆――――・・おい!待て!!』
「―――声をかけるとびくりと体を震わせ止まり、俯きながらもオズオズと返事をして来ましたのでこちらも一瞬気を緩めたところ、急に身を翻し、とてつもない速さで逃走致しましたので追いかけておりました」
ふむ。
抜いた小剣は脅しのために投げようとしたのだろうが、それも出来ず仕舞いに終わったとみえる。
相手はそれ程に早いということか。
「―――で、捕まえることは出来たのかい?その様子では、取り逃がしたように見えるが」
「はい。真に、申し訳御座いません!!何分、私よりも数倍に速く・・・」
跪いたまま話す彼の大きな体が一層に縮み込み、震えた声を出す。
恐らく私の殺気が伝わっているのだろう。これでも抑えているつもりなのだが。
「あぁ、分かっている。で、その者の特徴は?」
「はい―――姿はこの城の使用人のものと全く同じで御座いました。髪は黒色。瞳は、伏せておりましたので分かりません」
・・・話を聞く限り“不審物の落とし主”とみて、まず間違いないだろう。
やはり、用事があるのは、彼女なのか。
悪いが、アランがいなくとも、この私がいる。
私の視界の範囲内、指一本分たりとも彼女には近付けたりはしない。
決して。
“――私は、エミリーに関することだけには、冷静さを欠くのだ――”
アラン・・どうやら私も、君と似たようなものらしい。
だが、安心してくれ。必ず、守ってみせるよ―――
跪き続ける兵を立たせ持ち場の死守を命じ、再び塔の中へ目を向ける。
そろそろ彼女が現れるはずだ。
それにしても、幼い頃からずっと変わらないな・・・。
煌びやかな王の塔に比べ、シンプルな作りのアランの塔。
政務塔との変化が、全くない。
玄関から覗ける限りの空間にある壁は、相変わらずに石造りなままで装飾も施されていない。
以前と変わったところと言えば、この玄関内の壁だ。
ここに、大きな花の風景画が一つ掛けられ、向かい側に生け花が飾られるようになった、たったそれだけだ。
アランらしいと言えばそうだが、婚姻したのだからもっと手を入れたらどうだろう、と思う。
もっと王子妃色に染めてもいいと思うのだが。
その方が、きっと、エミリーが喜ぶ―――


