シャクジの森で〜番外編〜

医務室でのあの状況に加え・・・頑として口を閉ざし何も語らない訳は、後々の自分の立場を思い何者かを庇っている、そう考えれば説明もつく、か―――


兵とのものではなくメイド同士のトラブルの線が濃い、と判断するのがやはり妥当だろう。

私が直接尋問してもいいが、もしも考えた通りなのであれば管轄外となる、先ず侍女長に任せた方が良いな。

長年総括しているのだ、彼女も分かってることだろう―――


書類に書き込みを加え、処理済みのサインをし箱に入れる。

更に侍女長への伝書を作成し、兵を呼び手渡すように伝えた。



「とりあえず、今のところは、すべて“良し”だな。あの件以外は・・・」



漸く集中できる、そうひとりごちて珈琲に手を伸ばし、一口含み苦笑を漏らした。

レスターに指示したあとに所望したこれは、もうすっかり冷えてしまっていた。


飲むのを忘れる程に余裕がなかったとは・・と自嘲する。



今のところ、レスターからは何の報告もない。

恐らく、入城者の所在確認に手間取っているのだろうと思うが―――


一気に珈琲を飲み干し窓の外に目を配る。


例の不審物は暖炉前の椅子に置かれている。

持ち主は隠したままの荷物を気にしている筈だ。

時間が出来れば必ず見に行くだろう。

そこを捕らえられれば一番いいのだが。




『パトリック様。ウォルター団長よりの緊急伝言で御座います。失礼致します』



入室を許可する間もなく息を切らしたまま入ってくる。

はぁはぁと乱した息を整えることなくビシリと礼を取るこの者は、アランの塔に配属された兵だ。

確か、2階の担当をしてると思ったが。


その尋常じゃない様子に心中がざわざわとした嫌な感覚で満たされるが、ここは判断を誤るわけにはいかない。

兎に角落ち着かなければ・・・そう気を引き締め、彼を見た。



「不躾申し訳御座いません!」

「いや構わないよ、塔で何があった?」

「はい。エミリー様が――――」



その名を耳にすると同時にすぐに動いていた。

ガタンと音を立てて椅子から立ち上がりすぐに行動を開始した私に驚いたのだろう、彼の言葉がぷっつりと途切れる。


王子妃に何があった?と上着を羽織りながら先の言葉を促せば、早口で伝言を伝え始めた。




「外出を希望されており私共では阻止することができません」



お力添えを頂きたく―――と追いかけるように続く言葉を扉まで歩きながら聞く。



―――やはりな―――


この事態の予測はしていた。

彼女のことだ、友人が来れば共に散策したがるだろう、と。




「今現在、王子妃はどちらにおいでだ?」