シャクジの森で〜番外編〜

一撃を加えようとした際、目の端に瞬間的に捉えたもの。

ふんわりとした艶やかなブロンドの髪、薄紫のワンピース。

振り下ろす腕を瞬間的に反らし、捻じり上げようとした腕を咄嗟に離して、止まらぬ勢いを殺すため、素早く布団を被せて中に閉じ込めた。



『もがっ・・・んーーっんーー』


―――っ・・・・・・・。


これは・・やはり・・・まさかとは思ったが・・・。



アランは布団の中でバタバタともがく、賊にしては小さな身体を茫然と見つめた。

体の体温が一気にサーっと下がっていく。



―――血の気が引いていく―――


と申すのはこういうことか。



「―――エミリー?」



急いで布団を剥ぎ取ると、薄紫のワンピースを着た背中が目に入った。

艶々のブロンドの髪がベッドの上に乱れ散り、起き上がろうと懸命にもがいている。


手をバタつかせている身体を仰向けにして助け起こし、抱き寄せて膝の上に横抱きにして乗せた。


乱れた髪を丁寧に梳くと、涙に滲んだアメジストの瞳がこちらを覗いた。



「・・・すまぬ、まさか君だとは思わぬゆえ。だが、君が無事で良かった――――」




キュッと抱き締め、詫びるように髪を何度も撫でた。


身体が少し震えておる。

無理もないか、随分驚かせてしまった。


アランは、エミリーをベッドの上にそっと寝かせ、痛む場所はないか丁寧に調べ始めた。

反応を注意深く見ながら、腕を上げたり下げたり、身体を横にしたり、抱き起こしたり。

エミリーは、驚きのあまり身体が固まってしまったのか、声も出さずにされるがままになっている。


・・・幸い、怪我はなさそうだ。

だが、まだ震えておる。


落ち着かせるために抱き寄せて何度も背中をさすった。



「すまぬ、エミリー。平気か?」


「ぇ・・・?はい・・・平気です。でも、急に引っ張るんですもの。アラン様ったら、ヒドイわ・・・それに、とても怖かったわ」


そう言ってチラッと見上げ、口を少し尖らせてぷいっと横を向いてしまった。

エミリーのこんな表情は初めて見る。

顔を覗き込むと、フィッと横を向いてしまう。

・・・怒らせてしまった。

もしも、このままずっと一日機嫌を損ねておったらなんとしよう・・。



「すまぬ。目覚めた際、君が腕の中に居らぬとは初めてのこと。脚を忍ばせて歩く気配に、君が賊に囚われたと・・・。心臓が止まるほどに動揺したゆえ・・・正確な判断が出来なかった。だが、何故あのように静かに近付いた?」