シャクジの森で〜番外編〜

遅いランチを済ませて珈琲を飲み一息をついた頃、長官室の扉がノックされた。

今の時刻に来るのは誰もいない筈だ・・・何か不測な事態が起こったのか。

緊張感を持って入室を許可すると「失礼致します」と入って来たのは、城門の管理を任せている兵士団長のレスターだった。


何やら神妙な表情をし、それに、頬に引っかき傷のようなものが出来ている。

腫れ上がり滲み出た血が生々しいが、彼ほどの男がこのような傷を負うとは、一体どうしたんだ?



「君がここに来るのは珍しいな。何かあったのか?」


落ち着かせるよう成るべく静かに尋ね、そこ、随分痛そうだな?と頬を指し示すと、レスターはバツの悪そうな顔になり頬を掌で隠した。



「醜態、申し訳御座いません」

「構わないよ。で、用件は何だ?」

「はい、実は先程、無許可で城門を抜けようとする一般の民が出たと報告を受けたのです」



抜ける者?出る方なのか、それとも入る方か。

出る方ならば、普段通りに城門で氏名を記入させればいいのだが。

思ったよりも小事だな―――



「それは、入、出、どちらだい?」

「入城する方で御座います。普段通りに無許可な者は追い返すのですが。少し問題が発生しておりまして、長官殿の判断を仰ぎに参った次第で御座います」

「うむ。で、問題とは、詳しく話してくれるか」

「その者は、警備方の前を素通りしようとしたので、通常通りに兵が止めたそうです――――」



『あー、そこの者!待て待て。許可証はどうした?こちらに来て見せろ』


『え?そんなもの持ってないよ、何だいそれは』


『持ってないと、城には一歩も入れんぞ』


『嘘だろ!?・・あ!もしかして。ねぇ、それってどんなものだい?』


『あーそうだな。臨時発行ならば、本くらいの大きさの紙に日付と入城者の名前と王子様のサインが書かれてるものだ』


『あーあー・・・分かった、あの紙切れかい!えーっと、ちょっと待っておくれよ?・・・確か、ここに―――あれ・・・・あれ?』




「無いと入れないと知ると、ポケットから袋まであちこちを探っておりましたが見つからず・・・警備兵との押し問答の末、つい先程まで入城許可証を確かに持っていたと言い張り、挙げ句の果てには、知り合いだと、恐れ多くもある人物のお名前まで出したそうで御座いまして―――」