案内されるままに進み入ると、政務塔の無機質なものとは違った、城らしい広く豪華な廊下が目に飛び込む。
壁や天井までもが煌びやかな装飾で埋め尽くされ、足下の感触はふわふわと柔らかになる。
いつもは無い赤の絨毯、今日は客人としてシンディが来るから敷いたのだろう。
いきなり変化した足元の影響で、シンディの身体がふらりと揺れる。
「―――っと・・・」
腕を引いてバランスを訂正すると、シンディが安堵したように息を吐いた。
「・・・ありがとう、お兄様」
「あぁ、足を取られないよう気を付けるんだよ。出来るね?」
「はい」
急に、先を歩いていた侍従長がピタリと止まり振り向いてシンディを見た後、おもむろに皺の刻まれた顔を歪めて目頭をそっと押さえた。
「・・・シンディ様、大変お綺麗で御座います。あの小さく泣き虫だったシンディ様が・・・と、私は一瞬見違えてしまいましたよ」
「・・・どうもありがとう―――でも、その様子、何だかおかしいわ。本当にそう思ってるの?」
言いながら訝しげに顔を覗き込むシンディ。
と、彼は手をひらひらと横に動かし、大げさにも見える仕草で強く否定した。
「おやおや何を仰いますやら。本当で御座いますとも。ほれ、嬉しさのあまりに涙まで出る始末で御座います」
ご覧下さいと言いながら細めな瞳を精一杯開いて近付いて見せ、「ほれ、ここ。ここで御座います」と下睫毛辺りを指差す侍従長。
その半分おどけたような態度と表情をまじまじと眺め、シンディはプッと噴き出しコロコロと笑い始めた。
「ね、お兄様。侍従長ったら可笑しいわ。本当に睫毛が濡れてるの」
楽しげに笑う様を見て彼の瞳がふわりと和らぐのが分かる。
あぁ、そうか。やはり彼は――――
「でも、侍従長。綺麗なのは当然でしょ?この、と~っても素敵なお兄様の妹なんだもの!」
私の腕をぎゅぅと掴んで寄りかかり、ね?と自慢げに同意を促し、嬉しそうにうふふと笑った。
彼も「あぁそうで御座いましたな!」とうけあい、髭を震わせながらホッホッホと笑っている。
そういえば。
この侍従長は昔からシンディを気に掛けていてくれたな。
まだ小さな頃に、泣き声が聞こえればすぐさま飛んできて、こんな風におどけた様子を見せて笑わせてくれていた。
あの頃と、全く、何も変わらない―――
幼い頃から見知った侍従長との会話のお陰で堅かったシンディの表情が一息にほぐれ、言葉遣いも余所行きではなくなってきた。
そう、何も畏まって緊張することはないんだ。
いつもの通りで良いのだから。
「まあ!シンディ、お待ちしてましたのよ!」
壁や天井までもが煌びやかな装飾で埋め尽くされ、足下の感触はふわふわと柔らかになる。
いつもは無い赤の絨毯、今日は客人としてシンディが来るから敷いたのだろう。
いきなり変化した足元の影響で、シンディの身体がふらりと揺れる。
「―――っと・・・」
腕を引いてバランスを訂正すると、シンディが安堵したように息を吐いた。
「・・・ありがとう、お兄様」
「あぁ、足を取られないよう気を付けるんだよ。出来るね?」
「はい」
急に、先を歩いていた侍従長がピタリと止まり振り向いてシンディを見た後、おもむろに皺の刻まれた顔を歪めて目頭をそっと押さえた。
「・・・シンディ様、大変お綺麗で御座います。あの小さく泣き虫だったシンディ様が・・・と、私は一瞬見違えてしまいましたよ」
「・・・どうもありがとう―――でも、その様子、何だかおかしいわ。本当にそう思ってるの?」
言いながら訝しげに顔を覗き込むシンディ。
と、彼は手をひらひらと横に動かし、大げさにも見える仕草で強く否定した。
「おやおや何を仰いますやら。本当で御座いますとも。ほれ、嬉しさのあまりに涙まで出る始末で御座います」
ご覧下さいと言いながら細めな瞳を精一杯開いて近付いて見せ、「ほれ、ここ。ここで御座います」と下睫毛辺りを指差す侍従長。
その半分おどけたような態度と表情をまじまじと眺め、シンディはプッと噴き出しコロコロと笑い始めた。
「ね、お兄様。侍従長ったら可笑しいわ。本当に睫毛が濡れてるの」
楽しげに笑う様を見て彼の瞳がふわりと和らぐのが分かる。
あぁ、そうか。やはり彼は――――
「でも、侍従長。綺麗なのは当然でしょ?この、と~っても素敵なお兄様の妹なんだもの!」
私の腕をぎゅぅと掴んで寄りかかり、ね?と自慢げに同意を促し、嬉しそうにうふふと笑った。
彼も「あぁそうで御座いましたな!」とうけあい、髭を震わせながらホッホッホと笑っている。
そういえば。
この侍従長は昔からシンディを気に掛けていてくれたな。
まだ小さな頃に、泣き声が聞こえればすぐさま飛んできて、こんな風におどけた様子を見せて笑わせてくれていた。
あの頃と、全く、何も変わらない―――
幼い頃から見知った侍従長との会話のお陰で堅かったシンディの表情が一息にほぐれ、言葉遣いも余所行きではなくなってきた。
そう、何も畏まって緊張することはないんだ。
いつもの通りで良いのだから。
「まあ!シンディ、お待ちしてましたのよ!」


