シャクジの森で〜番外編〜

先の月祭りで巫女を務めて以来密かに人気を得ていることは知っていたが、目の当たりにすると、やはりどうにも気に入らない。


これは通例と聞いたのだが、巫女となった娘の元には、この会の数日の後に良い縁談が山のように舞い込むらしい。


大方のところ、私はこうだと考えている。

“労をねぎらい談笑しながら、その娘の人となりを見る”

というのが、この昼食会の本来の目的なのだろうと。


巫女を務めるのは大抵見目麗しい容姿をした年頃の娘だ。

そのために月祭り後は「あの娘は何処の家の者だ?」「お相手はおられるのか」等々、貴族方からの問い合わせが城に多く届くと聞いた。

国王夫妻の覚書があればなおさらに縁談は増えるのだろう。


・・・だが、今年はシンディだ。

お二人もよく知る者であるし、しかも、まだ学生なのだ。

まさか、そんなことにはならないと思うが。

非常に、不安だ。

まだまだ私の大切な妹であり、誰のものにもなって欲しくないのだが―――――



「シンディ、緊張してるのかい。普段通りでいればいいんだよ」

「はい・・お兄様・・・平気よ、私、頑張るわ」


―――ん?・・平気と言うのは分かるが、一体何を、頑張るんだ―――?


そう疑問に思いつつも問うのをやめておいた。

幼い頃から存じ上げてるとはいえ、初の改まった会食でしかも自らがメインなのだ、緊張するのは至極当然で、受け答えもおかしくなるのは仕方ない・・・

そう思っておこう。


私も同席出来ればいいんだが―――


シンディはゆっくりとした歩調で進み、王の塔の入口が近づくにつれてだんだんと腕に掴まる手に力が入り、体が硬くなってくのが分かる。


少しでも和らげようと気遣い、言葉を掛けながら進んでいると、王の塔への入口に辿り着いた。

今日は警備兵の他に、国王付の髭の侍従長の姿もある。


「パトリック・ラムスターだ。シンディ・ラムスター嬢をお連れした」


ビシッと姿勢を正し真正面に立つ警備兵に先ずは声をかけると、無言のまま頭を下げ脇に下がっていく。

かわりに侍従長が前に進み出て、髭を揺らしながら柔らかく笑った。



「はい、ラムスター様。ようこそおいで下さいました」


「約束の開始時刻より早いが、了承は取ってある」


「はい。そのように伺っております。どうぞ、お入りください」