シャクジの森で〜番外編〜

学校を卒業すればじきに縁談が舞い込むようになる。

ラムスター家の娘なんだ、方々から引く手数多に来るだろう。

良い縁談であればとんとん拍子に話が進み、花嫁修業を経てあっという間に嫁入りだ。

シンディが相手を気に入れば、だが――――・・・。



“私は、お兄様より素敵な人じゃないと絶対嫌よ?”



事あるごとに、シンディはそう言ってくれる。

幼い頃からずっと、大きくなった今も変わらずに。

月祭り直後には「アラン様にもフラれちゃったし・・。お兄様以上の人なんてもうどこにもいないわ。どうしよう・・・これじゃきっと一生恋人が出来ないわ・・・」などと、嘆き哀しそうにも可愛いことを呟いてくれた。

あの時は、地中にめり込んでしまったかのような状態で、慰めるのに随分苦労したな。

思いつく限りのあらゆる手段を使ったが、気持が上向くまでに随分と時がかかったものだ。

何しろ沈む者同士で、あの頃は私も、言葉では言い表せないほどに心に痛手を負っていたのだから―――



「ね、お兄様・・どうかなさったの?」



くいっくいっと腕を引っ張られて視線を移せば、心配げな色を含んだ瞳がこちらを見上げていた。



「いや、何でもないよ―――どこか、おかしいかい?」

「何だかいつもと違うように思えるわ。気持が沈んでるように感じるの」


―――あぁ全く。

鋭いな・・・女の勘というものか?

・・・少し滅入っているのは事実だが、見た目は普段と全く変わらない筈なのに。



「シンディ、それは気のせいだよ。ほら、私のことは気にせずにいないと。そんな顔をしていると、折角の装いが沈んでしまう」

「はい。お兄様、気を付けるわ」


でもお兄様ったら。そうは見えないわ、やっぱり・・・などと小声でブツブツ言うのを聞き流し、王の塔を目指す。


今日は『月祭りの慰労』と銘打ち、国王夫妻がささやかな昼食会を催してくれるのだ。

これは毎年行われるもので、少しばかりの儀式をして国王に巫女の名を返上し、3人で会食をするというもの。

これにて本当に巫女のお役御免となる。


私の心のもやもやの原因は大半が今朝の出来事で占められているが、欠片の一つはこの会食にあるのだと、たった今自覚した。


こうして歩いていると、すれ違い挨拶する者たちの視線が私の隣に釘づけになるのがわかる。