シャクジの森で〜番外編〜

そう呟き頬を真っ赤に染め、勢いよく何度も首を縦に振る彼女にもう一度微笑みを向けておく。

涙を止めた瞳はきらきらと輝いて見え、なかなか可愛い娘だと思う。

先ずは、怪我の治療をしないといけないな・・・廊下で仲間も待ってるのだから。



「それは良かった。ついでに、怪我をした手を診せてくれるかい?」

「ぇ―――あ、はい。お願いします・・・」



差し出された手を支えてじっくり診れば、堅い物でガリガリと引っ掻いたような傷が出来ていた。

深くはないが範囲が広い。


「これは、痛いかい?」


手首を優しく捻ってみると、案の定ぴくんと反応した。

軽い捻挫をしているようだ・・・日常生活に困るほどではないだろう。

これは、恐らく転倒したな―――


薬品棚から薬を取り出して手当てを施し、ちょっと待っててくれるかい?と声をかけると素直に頷いた。

大人しそうな娘だ。





「あ、兵士長官様、こちらにいらっしゃったのですか。玄関にシンディ様がお見えになってましたよ。貴方様をお探ししているようでした。あぁー・・これは一体・・・リード、どうしたんですか?」


漸く戻ってきたフランクが鞄を置きつつ部屋を見廻し、残念そうにも呆れた声を出すと、リードが器具を拾いながらぶっきらぼうに答えた。


「私は、悪くない筈です」


・・・確かに、そうだ。


「フランク。これは、私が―――」

「あぁ長官様、良いですよ。それよりも、その方は―――?」

「これは、手の甲を―――」



フランクに怪我の様子と施した治療を詳しく伝え、急ぎ医務室を後にした。

本来の目的は果たせずじまいだったが今は仕方がない。

ウォルターを探し出し、メイドの怪我の原因を調査するように指示をした。

侍女長に聞けば、すぐに詳細が判明するだろう。

兵とのトラブルではないといいのだが―――




「やっと、見つけたわ。お兄様、どこにいらしてたの?」



前方から聞き覚えのあるホッとした様な声を聞きとり目を上げれば、楚々と歩いてくるシンディが映った。

髪を結い上げドレスを身に纏い、声のトーンも落として上品に振る舞うシンディは美しく、十分大人に見えた。



「医務室に用事があったんだ、すまないね―――さぁ、行こうか」



腕を差し出すと、白く小さな手が乗せられた。

シンディをエスコート出来る機会に恵まれるのは、あとどれだけあるのだろう。