シャクジの森で〜番外編〜

脅かさないようできるだけ優しく声を掛けながらそっと扉を開けて治療室の方を覗くと、若いメイドが治療用の椅子に座りしくしくと泣いているのを発見した。

あぁもしや、この子が――――?


「・・・フランクはどうしたんだい?」


やんわりと訊ねるも返事をする余裕もないのだろうか、医師側の椅子に座った男は緊張した面持ちでワゴンの上をカチャカチャとさばき、ピンセットを取り出し消毒瓶を目の前に掲げ上げ、脇に置かれた瓶の中から震えた手つきで綿を摘み出して液の中に放った。

沈みゆくそれをじーっと見て、ごくりと息を飲んでいる。


かなり集中しているようだが、これは私の心中の要注意リストに名を連ねる男、フランクの助手、リード・スペクターだ。



「・・・フランクさんでしたら、いません・・・」


グスグスと鼻をすすりながら消え入りそうな声で答えてくれたのは、患者であるメイドの方だ。

俯いたまましくしくと泣き続けるその娘に、君がジェシカかい?と訊ねればコクリと首を縦に振った。


・・・何故、彼女一人なんだ?

そして、何故こんなに泣いているんだ?


手の甲を押さえ続けているのは、そこを怪我しているからだろうが・・・状態はどうなんだ?

適切な治療をしなければ、綺麗な肌に痕が残るぞ。

それに、これは手首を捻ってる可能性もあるんじゃないだろうか。

リードは、きちんと確認したのか?

普段からフランクの仕事を見てるとはいえ、彼はただの助手だ。


見ているだけで様々な疑問が浮かび上がり、どうにも黙っていられなくなる。

彼女の脇に沈み込み、声を掛けながら注意深く抑え込んでる手を退けた。


「いいかい?・・・すまないが。この手は、どうしたんだい?」



「あぁ!?うわあぁぁぁっ!!」



・・・ガタッ・・パリーン!・・・



「きゃぁぁっっ、いやぁぁっ」



「っ――――と、大丈夫かい?」



「うあぁぁぁあっっ」



・・ガタッ・・ガララ・・ガシャーン・・・・



・・・・これは。大変だ。