シャクジの森で〜番外編〜

「・・・侍女長。訊ねていいかい・・・これは、君が?」


「―――いいえ。こちらは、国王様より『内密に急ぎお渡しするように』とお預かり致しました物で御座います。何かは存じませんが、同封されたメモが御座いますので、それをご覧頂ければよろしいと存じます」



息をしっかり整えた後にずいっと近寄り声を潜め早口でそう言うと、役目は終わったとばかりにふぅ・・と息を吐き「確かに、お渡し致しました。では、失礼致します」と、膝を折って踵を返しきびきびと歩き去っていく。

その背中の向こうに、数名の若いメイドが頬を染めつつこちらを見ているのを見つけ、その中の一人と目が合ったので微笑みを向けながら軽く手を挙げて見せた。

―――と。

彼女達は身を竦めて嬉しそうな声を上げ


「ね、見た?こちらをご覧になったわよぉ!?」

「微笑みを下さったわ」

「やっぱり素敵ね!」

「来て良かったわぁ」


等々、きゃぁきゃぁと興奮気味に言い合ってるのが聞こえてくる。


いつも通りの反応、普段ならばそれで満足して割合すぐに走り去り仕事に戻るが、今日はいつまでもそこにい続け騒ぐのを止めようとしない。


―――見たところ、新米ではないようだが・・・これはまたひとつ不味ったかな・・・。



「こら!そこの貴女達!そこで何をしているのです。仕事は山ほどにあるのですよ、さぁ動いて動いて!」



痺れを切らした様子の侍女長が檄を飛ばし、ひらひらと両手を動かしながら近づき追いたてるようにしているが、あの迫力たっぷりの表情と声で背中を押されているというのに彼女達はあまり動こうとしない。



「でも、侍女長様―――私たち、サボってる訳ではないんです」

「そうなんです。私たちジェシカを待ってるんです・・・」



ジェシカ?と呟きながらピタリと止まり、自らの腰に手を当て首を傾げる侍女長を囲むようにして、胸の前で手を組んだ仕草の彼女達が立つ。



「聞きましょう、貴女が説明しなさい」

「はい、あの―――」


どうやらそれなりの理由がありそうなことに安堵し、彼女らのことは侍女長に任せて当初の目的場所である医務室の扉を開けた。



「―――フランクはいるかい?」


声をかけるも返答はなく、医務室の中は静まり誰もいない。

が、気のせいか、奥の方から女性のすすり泣く声が聞こえてくる。



「そこに誰がいる・・・どうかしたのかい?」