シャクジの森で〜番外編〜

好みの味に満足しつつ窓の外を眺めれば、心落ち着く秋の風景が広がる。


穏やかな日が射すギディオン城の広い庭。


いずれかと言えば、私は今の季節が一番好きなのだろう。

以前は、女性も喜ぶ色鮮やかな花が咲き誇る時が一番好ましいと思っていたが、いつの間にか秋が心地良いと感じるようになっていた。

風も涼やかに吹き渡り、落ち葉がひらひらと散りゆく様は物悲しくも風情がいいものだ。

景色を見て和むなど、こんな情緒的な気分を味わうとは・・・やはり生涯初の失恋を経験した所以かと思う。


ここ数ヵ月の短い間に変わったと自分でも感じるのだから、傍から見ればもっと強く思うのだろう。


“寂しいんじゃないかと思って・・・”


何しろ、シンディが心配するほどなのだから――――

ふ・・と自嘲気味に笑み珈琲を口に含むと、今朝聞いた言葉が甦ってきてそれがまた違う意味合いを感じさせた。


“・・・若くはないということです”


・・・あー、いや、ウォルター違うぞ、そうではないだろう?

パトリック・ラムスターはフラフラと浮つくのを止め、漸く大人の落ち着きを手に入れたんだ、そう思って貰いたいものだよ・・・。




――――外は、今のところ平穏だな―――


大きな洗濯籠を運ぶメイド達が、にこやかに談笑しながら塔に戻ってくる。

城門に繋がる道の方では、庭師のモルトが箒を持った使用人たちに手ぶりを交えて何やら指示しているのが見える。

―――あの様子は、多分落ち葉の清掃をするのだろう。

色鮮やかな枯れ葉色に染まった道も風情があり好ましいが、あまりに落ち葉が多いと車輪や人が滑り転ぶのが難点だ。


そういえば。

去年は侍女長が転倒していたな。

足をねん挫してしまい、大騒ぎになったことを思い出す。

今年は、気を付けてもらわねば―――


指示を受けて散り散りに歩いていく使用人達の傍を、黒塗りの自馬車が城門に向かってゆっくり進んでいく。



「―――ん?あぁ・・もう、そんな時刻なのか」


壁の時計をちらと見やれば黒と白の針は丁度午前10時半を指し示していた。

馭者も時間ピッタリに出ていくとは、もしや、シンディに直接頼まれたのか?

今日はいつもに増して時が経つのが早いと感じる。

もう、迎えに行く時刻だとはな。



―――だが、しっかりと身支度を整えているのだろうか・・・。


一緒に来たメイドが起こしているとは思うが、今朝の様子を思い出すと毛布に埋もれてスヤスヤと寝息を立てる姿しか想像出来ない。



“ね、お兄様。出来るだけ早く行きたいの。いいでしょう?”