シャクジの森で〜番外編〜

「あぁ、待っていたよ。通してくれ」


静かに扉が開かれ、失礼しますと言って眼鏡をかけた白衣姿のフランクが入って来るさま、足早に近くまで寄ってきたので素直に腕を差し出した。


「ウォルターから疲労が濃いと伺いましたが、状態はどうですか?」


足元に鞄を置き、手際よく私の脈をとり始める彼の眼鏡の奥がキラリと光る。

フランクの診察を受けるのは随分久しぶりだな・・・彼女が倒れたあの日に、腕を怪我して以来か。

あの時は、アランも倒れたんだったな―――


「大したことはないんだが、今日はアランがいないだろう?心配したウォルターが呼ぶと言って聞かなくてね。すまない、今の時期は忙しいだろうね」


「いえ、そんなことはありませんよ。以前とは違って今はリードもおりますしね。彼は性格は素直じゃありませんが、よく働いてくれます」



リードとは、あの助手のことだな。

エミリーと仲が良いと聞く、すらりと背の高いあの男だ。

シリウスが警戒し、名前を出せばアランが渋い表情をする者の一人だ。


今までに垣間見た彼の言動や姿を思い出せば、確かに警戒対象だと頷けるものがある。

一応、心に留めておくか――――


「彼は、医務室から出る予定はあるのかい?」

「はい。午後に買い物に出しますが・・・それが何か―――?彼に用事があれば伝えますよ」

「いや、何もない。気にしないでくれ」


それならば良いですが。

そう言いながら鞄の中から聴診器を出すフランクを見てふと思いつく。


「フランク、この後エミリーの診察に行ってくれないか。時節柄、彼女の体調にも不安がある。頼めるかい?」



目の前で、真剣な表情で聴診器をあてている彼の眼鏡の奥がふわりと緩む。

聴診器を外しながらニコリと微笑みを見せるのは、医師フランク独特の患者を落ち着かせるためのものだ。



「貴方様もですか。大丈夫です。エミリーさんのことは、王子様からも国王様からも頼まれておりますので、この後伺う予定ですよ」

「そうか・・・しっかり頼むよ。異常があれば、すぐに知らせてくれ」

「はい。兵士長官様、承知いたしました。貴方様には、この薬を処方しましょう。今足りないものは、こちらです―――では、失礼します」


眼鏡の奥をギラリと光らせて立ち去っていく後ろ姿を見送った後、処方袋を開いてみた。

食後とも食前とも言わなかったが、一体何を――――っ・・・。


・・・コレは。

以前に私が進呈した物だ・・彼はまだコレを持っていたのか。


急いでソレを仕舞い、ぴっちりと袋上部を折り込んで机の上に戻してひとりごちる。


「参ったな。全く、油断できない男だよ・・・」