「―――っと、アラン?そろそろ出発しなければならんぞ」
焦りを悟られないようなるべく落ち着いた声を出し、動き出した肩に手を置いて止め、瞳に厳しさを込めて見据える。
私の前でしないでくれないか。そんな思いも込めながら。
「皆が待っているぞ」
ダメ押しに再度進言すれば、お返しとばかりに鋭い瞳が向けられる。
それは、まぎれもなく一人の男の表情で―――いや、私も男だ。
そうしたい気持ちは非常に大変によくわかるが、今は、勘弁してくれ。
それに、私には君に伝えたいことも有るのだよ、予定時間までもう間がないだろう?
無言のまま心の中で語りかければ、伝わったのかそうでないのか一つ息を吐いたアランが静かな声を出した。
「パトリック―――分かっておる。・・・エミリー、行って参るゆえ―――夕食までには帰城する」
「はい。アラン様、お待ちしています―――」
軽く目を閉じる彼女の額に唇を落としたアランがゆっくりとか細い身体を解放したあと、ババッと音を立ててマントを翻し踵を返した。
歩きながらテノールの声で出発の時を告げると、ジェフの団員達から威勢のいい声が上がる。
それぞれが馬に乗り込み出発準備を整えれば、場の空気は瞬時に凛としたものに変わった。
「アラン―――」
馬車に乗り込む寸前に声を掛けると、何だ?と振り向いたブルーの瞳は既に鋼の気を纏っている。
王子の、顔だ。
「今朝の日刊紙の情報だが、実は―――」
気になる記事を小声で伝えれば重く受けとめたらしく、「城内でも気を付けよ、私も行程中気を配る」との言葉を賜った。
「兵士長官、くれぐれも留守を頼む」
「は、仰せのままに―――お任せ下さい」
彼が乗り込み扉を閉める馭者に「安全に頼むよ」と声を掛けて振り向けば、馬車を見つめる寂しげな表情の彼女が目に映る。
―――彼が出掛けるだけで、君は、そんな表情をするのだな・・・。
彼のものだと分かってはいても胸に迫るものがある。
隊列から離れてぽつんと佇むその傍らに立つと、腕が勝手に動き始め小さな肩を包みそうになった。
拳を握り締め耐えてなんとか引き離し、手が出せぬようポケットに入れ込み出掛けて行く馬車列を見送った。
せめて、彼が見えなくなるまではここにいなければ―――
耐える私の横で、すでに見えなくなってしまった隊列に向かって振っていた手を下ろして、彼女がぽつりと呟いた。
「・・・いってらっしゃい、アラン様・・・」
「っ―――・・・」
焦りを悟られないようなるべく落ち着いた声を出し、動き出した肩に手を置いて止め、瞳に厳しさを込めて見据える。
私の前でしないでくれないか。そんな思いも込めながら。
「皆が待っているぞ」
ダメ押しに再度進言すれば、お返しとばかりに鋭い瞳が向けられる。
それは、まぎれもなく一人の男の表情で―――いや、私も男だ。
そうしたい気持ちは非常に大変によくわかるが、今は、勘弁してくれ。
それに、私には君に伝えたいことも有るのだよ、予定時間までもう間がないだろう?
無言のまま心の中で語りかければ、伝わったのかそうでないのか一つ息を吐いたアランが静かな声を出した。
「パトリック―――分かっておる。・・・エミリー、行って参るゆえ―――夕食までには帰城する」
「はい。アラン様、お待ちしています―――」
軽く目を閉じる彼女の額に唇を落としたアランがゆっくりとか細い身体を解放したあと、ババッと音を立ててマントを翻し踵を返した。
歩きながらテノールの声で出発の時を告げると、ジェフの団員達から威勢のいい声が上がる。
それぞれが馬に乗り込み出発準備を整えれば、場の空気は瞬時に凛としたものに変わった。
「アラン―――」
馬車に乗り込む寸前に声を掛けると、何だ?と振り向いたブルーの瞳は既に鋼の気を纏っている。
王子の、顔だ。
「今朝の日刊紙の情報だが、実は―――」
気になる記事を小声で伝えれば重く受けとめたらしく、「城内でも気を付けよ、私も行程中気を配る」との言葉を賜った。
「兵士長官、くれぐれも留守を頼む」
「は、仰せのままに―――お任せ下さい」
彼が乗り込み扉を閉める馭者に「安全に頼むよ」と声を掛けて振り向けば、馬車を見つめる寂しげな表情の彼女が目に映る。
―――彼が出掛けるだけで、君は、そんな表情をするのだな・・・。
彼のものだと分かってはいても胸に迫るものがある。
隊列から離れてぽつんと佇むその傍らに立つと、腕が勝手に動き始め小さな肩を包みそうになった。
拳を握り締め耐えてなんとか引き離し、手が出せぬようポケットに入れ込み出掛けて行く馬車列を見送った。
せめて、彼が見えなくなるまではここにいなければ―――
耐える私の横で、すでに見えなくなってしまった隊列に向かって振っていた手を下ろして、彼女がぽつりと呟いた。
「・・・いってらっしゃい、アラン様・・・」
「っ―――・・・」


