『止めてお母さん!
私が悪いの』




病室の中にいる私が、親や彼のいる廊下まで聞こえるように声は出せなかった。




『俺が、将来………

いや、今から一生を通して幸せにします』



『また勝手なことを…』


『いいえ。
俺は、必ず幸せにします。

俺に……………俺に…』



彼はそれから、ずっと私の傍にいてくれた。



今では母親も、彼に私を任せている。



部屋の机の中には、婚姻届が閉まってある。



私が16歳になる日に、彼から貰った一つでもある。



しかしそれは、未だに書けていない。




「なぁ、婚姻届書いてくれた?

あの日から一年経っちゃうんだけど」




私の顔を覗き込みながら、彼はそう言って笑う。



………書きたいよ。


でも、そんな罪滅ぼしの一つで“結婚”したくない。



………して欲しくない。



「私、二十歳になるまで結婚とかしないから!」