彼は酸素マスクを取ると、上半身を起こした。



「ちょっ、腰...」


「いいから、今は聞け」


「でも...分かった。
分かったから、寝ててほしい」




彼は頷くと、もう一回寝転ぶ。



酸素マスクがいらないほど、彼の呼吸は安定していた。




「言い方を悪くすると、俺は一生、この傷に追い込まれなきゃいけないんだ。って」



「.......ッ!!」



「でも、違うと気づいたんだ。
進路を考え始めた頃に」




彼は私を見つめると、私の涙を拭った。




「最初は償いだったのかも知れない。

でもある日、同級生に告白されて、気がついた」



「私が好きだって?」



「...それもある。

でも一番は、傷のおかげで縛り付けられていることに、安堵したんだ」



「えっ?」



「俺が縛られているということは、お前だって同じはず。

同じ気持ちだってことが、嬉しかった。


傷があることで、お前は俺と結婚することになる。
お前にとってはいい迷惑でも、俺にとっては好都合」




結論どっちなの?