お母さんを抱えた彼が、外に出てきた。
私を見つめ頷くと、ニコリと笑った気がした。
「駄目ッ………!」
ガシャーンと、大きな音が辺りに響く。
「ベランダの柵が落ちてきたぞぉー!」
「レスキュー隊員と、奥さんがッ!!」
私は、鉄の柵を取っていく消防士を見つめた。
柵が覆い被さっている彼とお母さん。
その姿が見えない。
「お母さんッ!」
柵がどくと、彼に隠れてお母さんが出てきた。
「救急車だッ!」
酸素マスクをして、お母さんは運ばれていく。
でも、お母さんよりも、彼は重傷だった。
「おい、分かるか?
俺が分かるか?」
意識が無いのか、他のレスキュー隊員達が彼に呼びかけてる。
私は消防士さんを振り払い、彼のそばまでいく。
「起きて、起きてッ!」
「君はお母さんと…」
「私と結婚するんじゃないの!?
私のことどう思ってるの!?」