あおぞらカルテ

医局のデスクでへこんでると、大屋先生がやってきた。

両手にはコーヒーカップ。


「まぁ、そんな日もありますよ」

「…ありがとうございます」


カップを受け取って、一口。


「えぇ!?ココア!?」


甘ったるい味が口の中に広がった。

コーヒーかと思って飲んだから衝撃だった。


「カカオに含まれるGABAは神経鎮静効果があるって、医学部で習いませんでしたか?とにかく、一度リセットしましょう」

「…はぁ…」


やっぱり何を考えてるのかサッパリわかんねー。

大屋先生は美味しそうに味わいながら、立ったままココアを飲んでいた。


「彼女はどうしてICDを入れるのが嫌なんでしょうね?」

「…ドーン!と電気ショックが来るのが怖いとか?」

「聞いたんですか?」

「一般的な予想です」

「これは想像の話ではありません。医療の世界で思い込みほど怖いものはない。確認作業が必要ですね」


だって、話してくれないじゃん?


「まずは、キミ自信が彼女のことを“やっかいな患者”だと思い込んでいることが問題です。リセットして、もう一度話しませんか?」


…鋭い。

里香の言ってた通り、観察眼が鋭い。

オレ、そんな態度に出してた?


「それ飲んだら、すぐに行ってきなさいね」

「…う、はい」


すんげー甘いココア、なぜか心落ち着く味。

GABAが効いてきたか?