レントゲンではろっ骨骨折が見つかったけど、幸いにも安静で治りそうな軽傷。

胸部レントゲンで他に異常はなかった。

だけど…

打撲の跡は胸だけじゃなかったんだ。

背中から腹、腕にも。

服を脱がせてやっと気付いた。


「はるとくん、これってさ、ホントに学校でやられたの?」


泣き止んだはるとくんは、しっかりと答えた。


「…そうだよ」

「殴られたりすんの?」

「うん」

「…そっか、辛いなぁ」


本人が“学校でやられた”って言うと判断が鈍る。

他の患者さんの対応をしていた田尾先生に相談すると、診に来てくれた。

そしたら、その傷を見るなり


「入院させとけ」


と一言。

確かに、そのほうが賢明かもしれない。

確信は持てないけど、不安が残ったまま帰すのには気がひけたから。


「レントゲンで骨折が見つかりましたので、大事をとって入院してもらいますね」


母親にそう言ったけど、特に動揺することもなかった。


「そうですか。その方が安心ですよね。よろしくお願いします」


うーん…やっぱり虐待じゃないのかも。