「先生、どうしますか?」


看護師さんってのは、こういう時の決断は医者任せにする。

“先生、どうしますか?”は彼女たちの口癖みたいなもんだ。

でも、診療した医者が責任者になるから、ここはオレが決断するべきなんだろうけどさぁ。


「…うーん、困ったなぁ」


仕方なく、浮気相手に尋ねる。


「あの…病気の説明はどなたにしたらよろしいですか?」

「婚姻関係がない私には説明してもらえないっていうんですか!?あの人のことは、だれよりも私が知っているつもりです!!」

「…そ、そうですか。では、患者さん本人は現在ご家族とは…」

「一緒に住んでますけど…でもっ…いつかは私と…って約束してくれて…」


さめざめと泣かれると困る。

オレが泣かしたみたいじゃないか!?

結局、妻にも連絡をとって、当たり障りなく病状の説明をした。


「あの…主人はどこで倒れたんでしょうか?救急車を呼んでくださった方にもお礼が言いたいんですけど…」


いかにも主婦ってかんじの奥さんは、大人しそうな印象だった。

まさか夫が浮気してるなんて、思ってもみないんだろうなぁ…なんて。


「あー…通行人の方でしたので、名前を名乗らずに行かれたそうですよ」